組織再編成を行うと、当該組織再編成に係わる当事者には様々な課税関係が生じます。
今回は組織再編成を行った場合に、その当事者にどのような課税効果が生じるのかを見ていきます。
確認する組織再編成は「合併、適格現物分配、株式交換」です。
もう少し細かく分類すると「適格合併、非適格合併、適格現物分配、適格株式交換、非適格株式交換」における当事者の課税上の効果です。
「適格合併」の課税上の効果
以下のような事例で説明します。
・A社がT社を適格吸収合併
・交付金なし(A社株式のみを交付)
・T社株主はすべて個人株主
・T社がA社に移転した資産には含み益があった
✔当該適格合併により、資産や株式等はどのように移転したと考えるのか
適格合併について、法人税法は「資産が○○から△△へ移転し、株式が××から□□へ移転する」といった資産や株式の移転関係を詳細に規定しているわけではありません。
法人税法が規定しているのは「適格合併が行われた結果、A社にはどのような課税関係が生じるのか」「T社やT社株主にはどのような課税関係が生じるのか」といった点です。
したがって、適格合併の当事者に適用される各規定を見ていくと、その課税関係から逆算して、法人税法がどのような資産や株式の移転を想定しているのかを読み取ることができます。
そのような視点から、適格合併における資産や株式の移転関係を整理すると以下のようになります。

A社がT社を適格吸収合併する場合
・T社の資産等がA社に移転する
・T社の資産等の移転の対価としてA社株がT社に交付される
・T社がT社株主にA社株を交付することで、T社株主はT社株を放棄してA社株を取得する
・T社の利益積立金額(とT社の資本金等の額)はA社に引き継がれる
✔適格合併当事者の課税上の効果
T社
まずT社ですが、移転した資産等が帳簿価額でA社に引き継がれるため、この段階でのT社に対する含み益課税はなく(62条の2第1項)、A社が当該資産を譲渡等するときまで課税は繰延べられます。
T社株主
次にT社株主を見ます。一見T社からT社株主に対するA社株の交付は「T社の清算分配」のようにも見えます。しかし、清算分配ならT社の「原資(資本金等の額)と利益(利益積立金額)」がT社株主に分配されるはずですが、T社の利益積立金額(と資本金等の額)はA社に引き継がれます(2条18号、施行令9条2号)。よってT社からT社株主に対するA社株の交付は清算分配ではなく、単なるA社株式の形だけの交付であるため、T社株主はみなし配当課税を受けません(所得税法25条1項1号)。そしてT社株主のT社への投資は適格合併後も継続していると考えられるので、A社株式の取得価額はT社株式の取得価額を引き継ぎ(所得税法施行令112条1項)、課税の繰延を行います。
A社
続いてA社です。A社は自社の株式を発行してT社から資産等を譲り受けているので、資本等取引となり課税はありません(22条5項)。A社におけるT社の資産等の取得価額はT社の取得価額を引き継ぎます(62条の2第1項)。さらにA社はT社の利益積立金額も引継ぎ(2条18号、施行令9条2号)、T社からの移転資産の帳簿価額から当該利益積立金額を減額した金額が、A社における資本金等の額の増加額となります(2条16号、施行令8条1項5号ハ)。また、一定の欠損金の引継ぎも認められます(57条2項、3項、58条2項)。
A社株主
最後にA社株主ですが、この適格合併から課税上の効果は生じません。
「非適格合併」の課税上の効果
適格合併の場合の事例とほぼ同じですが、ここでは金額を当てはめて説明したいと思います。
・A社がT社を非適格吸収合併
・T社の資産等の移転の対価としてA社株式と資産を交付
・T社株主はすべて個人株主
・T社がA社に移転した資産には含み益が200万円があった
・T社の資産と負債はそれぞれ帳簿価額で500万円と200万円
・T社の資本金等の額は200万円、利益積立金額は100万円
・T社株主のT社株の取得価額は100万円
✔当該非適格合併により、資産や株式等はどのように移転したと考えるのか
非適格合併の場合の資産や株式の移転関係を上記の金額も考慮して整理すると以下のようになります。

A社がT社を非適格吸収合併する場合
・T社の資産等がA社に移転する
・T社の資産等の移転の対価としてA社株と資産がT社に交付される
・T社がT社株主にA社株と資産を交付することで、T社株主はT社株を放棄してA社株と資産を取得する
・T社の利益積立金額はA社に引き継がれない
✔非適格合併当事者の課税上の効果
T社
まずT社ですが、資産等を時価で譲渡したとされるため、T社の資産の含み益200万円に対して課税されます(62条1項)。T社は対価としてA社株と資産を取得し、直ちにT社株主に交付したとされるので、T社がA社株や資産を保有することによる含み益が生じる間もなくT社株主にA社株や資産を移転しており、A社株や資産の交付に関するT社に対する課税はありません。
T社株主
次にT社株主です。非適格合併において、T社の資産は時価評価されることで「500万円から700万円」となります。よってT社の時価評価額は「資産700万ー負債200万=500万」となり、時価500万のT社をA社に移転する対価として時価500万分のA社株と資産がT社に交付されます。
ところでT社の資産は時価評価されることで、T社の資産の含み益200万が実現し、それによりT社の利益積立金額も200万増加し、300万となります(ここでは便宜上、含み益200万円につきT社において課税されないとします)。
非適格合併ではT社の利益積立金額はA社に引き継がれないので、T社の資本金等の額200万と利益積立金額300万は「A社株式と資産」という形でT社からT社株主に分配されることになります。つまり「原資(資本金等の額)200万、利益(利益積立金額)300万」とする分配がT社からT社株主に対して行われるということです。

そうすると、T社株主は分配額500万から資本金等の額200万を差し引いた部分の300万(利益積立金額)に対してみなし配当課税がなされます(所得税法25条1項1号、所得税法施行令61条2項1号)。
さらにT社株主はT社株(取得価額100万)を譲渡したとされるので、資本金等の額200万円を譲渡対価して、差額である100万(譲渡対価200万ー取得価額100万)につき譲渡所得課税を受けます(みなし配当課税や株式譲渡益課税はみなし配当の所を参照してください)。
そしてT社株主におけるA社株と資産の取得価額は時価の500万となります。
ここでもしも、非適格合併の対価が「A社株式のみ」であった場合のA社株の取得価額を考えます。時価500万のA社株がT社株主に交付されていることになりますが、この場合、以下の4つの取得価額が考えられます。
① T社株の取得価額100万を引き継いでA社株の取得価額を100万とする
➁ A社株の取得価額を時価の500万とする
➂ T社株の取得価額100万に株式譲渡益100万を加えた200万とする
④ T社の取得価額100万にみなし配当額300万を加算して400万とする
このようにA社株式の取得価額を①500万、➁100万、③200万、④400万にすることの意味合いについて説明します。

➀のA社株式の取得価額を「100万」とするということは「合併時にT社株式の取得価額を引継いで株式譲渡益100万とみなし配当額300万の課税を繰延べる」ということを意味します。仕訳で表すと「A社株式100万/T社株式100万」ということです。
➁のA社株式の取得価額を「500万」とするということは「合併時にA社株を時価評価することで株式譲渡益100万とみなし配当額300万に対する課税をおこなう」ということを意味します。合併時に取得価額100万のT社株式(時価に換算すると500万の価値がある)を譲渡したとみなして、T社株の含み益400万円を実現させ、課税するということです。仕訳で表すと「A社株式500万/T社株100万・株式譲渡益100万・みなし配当額300万」となります。
➂のA社株式の取得価額を「200万」とするということは「合併時にT社株の含み益400万のうち、株式譲渡益100万だけを実現させて課税する」ということを意味します。T社株の含み益400万のうち、みなし配当額300万は課税を繰延べることになります。仕訳で表すと「A社株式200万/T社株式100万・株式譲渡益100万」となります。
④のA社株式の取得価額を「400万」にするということは「合併時にT社株の含み益400万のうち、みなし配当額300万だけを実現させて課税する」ということを意味します。T社株式の含み益400万のうち、株式譲渡益100万は課税を繰延べることになります。仕訳で表すと「A社株式400万/T社株式100万・みなし配当額300万」となります。
制度上は、非適格合併の対価がA社株式のみであった場合のA社株式の取得価額は④の400万となります。つまりこの場合は「T社株に対する株式譲渡益課税は繰延べる」ことになります。なぜなら、たとえ非適格合併でもT社株主にA社株式のみが交付される場合はT社株主のT社に対する投資は合併後も継続していると考えられるからです。しかし利益積立金額300万に対するみなし配当課税は行われることになります。なぜならこの合併のタイミングがみなし配当課税を行う最後の機会になるからです。もしも合併のタイミングで当該利益積立金額300万に課税せずに繰り延べると、当該利益積立金は将来「株式譲渡益」として課税されることになり、配当の性質を有するものに対する課税として不適切な課税となる考えられるのです。
A社
A社はT社を時価の500万(資産700万・負債200万)で引き継ぐことになります。
A社はT社を取得する対価としてA社株式と資産を交付しています。「T社を取得してA社株を交付する」行為は資本等取引となるので、この部分につきA社に課税されません(22条5項)。また「T社を取得して資産を交付する」行為は有償取得となるので、この部分についてもA社に課税はありません。
もっとも交付した資産に含み益があれば、含み益課税は受けることになります。
A社の資本金等の額は「受け入れたT社の価額500万から交付した資産の価額を減額した額だけ増加する」ことになります(法人税法施行令8条1項5号)。たとえばT社の受入れの対価として「A社株400万、資産100万」を交付した場合、T社の価額500万から交付した資産の価額100万を減額した400万につきA社の資本金等の額が増加します。
これは「T社400万を受け入れてA社株400万を交付する」という部分は「出資」にあたるため、A社の資本金等の額は増加しますが「T社100万を受け入れて資産100万を交付する」という部分は単なる有償取得にすぎないため、A社の資本金等の額は増加しないということです。
またA社はT社の利益積立金額や繰越欠損金を引き継ぐことができません。
A社株主
適格合併の場合と同様に、A社株主にはこの合併から課税上の効果は生じません。
「適格現物分配」の課税上の効果
✔現物分配とは
「現物分配」とは株主としての地位に基づいて行われる法人から株主に対する現物の移転のことです。
たとえば「その他資本剰余金の配当やその他利益剰余金の配当、自己株式の取得」などが現物の分配で行われるような場合です。
✔適格現物分配とは
適格現物分配とは現物分配のうち、完全親子関係にある法人間で行われる現物分配のことです。
たとえばB社の完全親会社であるA社がB社からその他利益剰余金の配当を現物により受けるような場合です。
✔適格現物分配と本支店間の資産の移動は実質的には同じ
適格現物分配とは、たとえば完全子会社B社が完全親会社A社に対して現物による配当を行うような場合です。
A社とB社は完全支配関係にあり、同じ法人グループ内に所属していると見ることができます。
そうであるならB社からA社に対する現物配当は、同一法人グループ内の資産の移転にすぎず、これはB支店からA本店への資産の移転と実質的に変わりません。
にもかかわらず、本支店間の資産の移転は法人内の資産の移転にすぎないから課税せず、完全支配関係にあるA社とB社間の資産の移転は法人間の資産の移転ということで課税するなら、両者の課税の公平が図れません。
そこで完全支配関係がある法人同士の資産の移転である「適格現物分配」には課税がなされないように制度設計されています。
✔適格現物分配の課税上の効果
たとえば完全子会社B社が完全親会社A社に対して、その他利益剰余金の配当を現物で行ったとします。そして当該配当が適格現物分配に該当したとします。
そうするとB社はA社に対して帳簿価額による資産の譲渡を行ったとして、B社に対する含み損益課税は繰延べられることになります(62条の5第3項)。
そして「その他利益剰余金からの配当」は法人税法上「利益からの配当」とみなされるので、B社の利益積立金額は(時価ではなく)帳簿価額に相当する金額だけ減額されます(法人税法施行令9条8号)。
A社における現物の取得価額はB社の帳簿価額を引き継ぎ(法人税法施行令123条の6第1項)、同額の利益積立金額が増加します(法人税法施行令9条4号)。この場合、A社はB社から配当を受けているので当該配当収入は益金に算入されそうですが、当該配当を益金に算入すると、「実質的に本支店間の資産の移転と変わらない同一法人グループ内の資産の移転につき課税する」結果となってしまうため、当該配当収入につきA社において益金算入されません(62条の5第4項)。
その後もし、A社が当該資産を完全支配関係のない第三者へ時価で譲渡した場合、取得価額と時価の差額がA社において課税されることになります。
「適格株式交換」の課税上の効果
✔株式交換とは
「株式交換」とはたとえば、A社がT社株主からT社株の全てを取得し、その対価としてA社株式などをT社株主に交付することを言います。
株式交換後、A社は「株式交換完全親会社」、T社は「株式交換完全子会社」となり、A社がT社の完全親会社となります。

✔適格株式交換の課税上の効果
株式交換が適格となった場合、A社はT社株を取得し対価としてA社株を交付するので、資本等取引となり(22条5項)、A社に対する課税はありません。
またT社株主は株式交換後もT社に対する投資は継続していると考えられるため、A社株の取得価額はT社株の取得価額を引継ぎ、課税は繰延べられます。
そしてA社株主とT社は株式交換の当事者ではないため、課税関係は生じません。
「非適格株式交換」の課税上の効果
当該「非適格株式交換」の当事者の課税上の効果を見ていきます。
A社
株式交換が非適格となった場合、たとえばA社はT社株主からT社株を取得し対価としてA社株と金銭を交付した場合、「T社株を取得してA社株を交付した部分」は資本等取引にあたり課税されず(22条5項)、「T社株を取得して金銭を交付した部分」は有償取得にあたり課税されません。
A社株主
A社株主は株式交換の当事者ではないため、原則として課税関係は生じません。
T社株主
T社株主については、非適格の場合であっても、対価としてA社株以外のものが交付されていなければ(つまりA社株のみが交付されていれば)、T社株の取得価額がA社株の取得価額に引き継がれ課税は繰延べられます。これはT社株主のT社に対する投資が株式交換後もA社を通じて継続していると考えられるためです。
T社
株式交換が非適格となった場合、T社が当該非適格株式交換の直前に有する「時価評価資産」の評価益または評価損がT社の益金の額または損金の額に算入されることになります(62条の9第1項)。
ここに「時価評価資産」とは固定資産、土地、有価証券、金銭債権、および繰延資産のことを言います。しかし、事務負担軽減の観点から、帳簿価額1000万円未満の資産等が当該時価評価の対象から除かれています(法人税法施行令123条の11第1項4号)。
株式交換においてT社は株式交換の当事者ではありません。つまり、株式交換によりT社の資産が移転するようなことがないにもかかわらず、株式交換が非適格であるならT社の一定の資産につき時価評価し、含み損益課税がなされるということです。これは未実現の利益に対する課税ということになります。
「株式交換が非適格になれば、T社の資産につき未実現利益に対する課税がなされる」となれば、株式交換を非適格で行おうとしている法人は「そのような課税がなされるなら株式交換は止めておこう」となり、本来中立であるべき税制が株式交換という組織再編成を阻害することになります。
このように税法が「株式交換が非適格になれば、T社の一定の資産につき未実現利益に対する課税を行う」と規定しているのは以下のような理由があるからです。
税法が「株式交換が非適格になれば、T社の一定の資産につき未実現利益に対する課税を行う」と規定している理由
原則として「適格合併」に該当すれば、合併会社は被合併会社を帳簿価額で引き継ぐことができ、課税繰延が認められます。言い方を変えれば「適格合併時に課税を回避できる」ということです。
よって合併を計画している法人は「適格合併」を行うことにより課税回避を行なおうとします。
たとえば、A社がT社を吸収合併しようとした場合、当該合併が「適格」にあたるなら、合併時に余計な税金を納める必要がないので、合併を行なおうとしている当事者であるA社とT社は「適格合併」となる事を目指します。
ところで「適格合併」となるための要件は、合併を行なおうとしている法人同士の関係性により異なってきます。合併を行なおうとする法人同士が完全支配関係にあるなら、その事実をもって当該合併は「適格合併」となります。合併を行なおうとする法人同士の株式保有関係50%超100%未満なら、「➀主要資産等移転要件、➁従業者引継要件、➂事業継続要件」の3つの要件を満たせば「適格合併」となります。そして合併を行なおうとする法人同士の株式保有関係が0%~50%以下なら、上記➀~➂の要件に加えて「➃事業関連性要件、➄事業規模要件、➅特定役員引継要件、➆株式継続保有要件」を満たせば「適格合併」となります。
つまり、合併を行なおうとしている法人同士の関係性が薄いほど、「適格合併」となるための要件が厳しく設定されており、「適格合併」を行うことが容易ではないのです。
そこでたとえば、法人同士の株式保有関係が0%~50%以下であるA社とT社が「適格合併」を行なおうとすると➀~➆の要件を満たさなければならないので、「適格合併」のハードルは非常に高いです。そこでこのルートを避けて簡単に「適格合併」が認定されるルートが存在します。それは以下のようなルートです。まずはA社とT社株主の間で「非適格株式交換」を行います。法人同士の株式保有関係が0%~50%以下であるA社とT社が「適格株式交換」を行うためには同様に➀~➆の要件を満たさなければなりませんが、この要件を満たさないような非適格株式交換を行うのです。そうすると、当該株式交換は非適格であっても株式交換後のA社とT社の関係は「完全親子会社関係(100%完全支配関係)」となります。そして完全支配関係にある法人同士であるA社とT社の合併は「適格合併」と認められます。
これは法律の穴をついた租税回避スキームなので、この穴を塞ぐために株式交換が非適格となった場合はT社の一定の資産につき時価評価して課税することで、非適格株式交換に続く適格合併による租税回避行為を防いでいるのです。

しかしこのようなT社に対する課税は未実現利益に対する課税であり、かつ租税が株式交換という組織再編成を阻害していることにもなるため、制度上いくつかの修正が施されて現在に至ります。

