組織再編税制➂(三角組織再編成)

今回で組織再編税制の3回目となります。

3回目は三角合併(三角組織再編成)を中心に説明します。

組織再編成の対価をめぐる法制度の変遷

今回は三角合併を中心に解説しますが、その中で一番に注目すべきポイントが「組織再編成の対価」です。

たとえば、吸収合併によりA社がT社を取得する場合、「A社はT社株主に対価として何を交付するのか?」ということです。

このように「合併などの組織再編成の対価として何を交付するのか?」というのが今回の話の中心となります。

会社法制定前の商法の時代における組織再編成の対価

平成17年に会社法が制定される前の商法の時代において、組織再編成の対価は「組織再編成を行う法人の株式」のみ認められていました。

したがって、たとえばA社がT社を吸収合併する場合、その合併の対価として認められるのは存続会社であるA社の株式のみであり、合併の対価として金銭その他の資産を交付することは認められていませんでした。

会社法制定後の組織再編成の対価

平成17年に会社法が制定されました。会社法においては、組織再編成の対価は「組織再編成を行う法人の株式」のみならず、金銭その他の資産(金銭、親会社株式、社債など)が認められることになりました。

これを「対価の柔軟化」と言います。

組織再編成の対価と法人税法

法人税法上の組織再編成は商法や会社法の概念を借用していると考えられます。

したがって、会社法制定前は商法の概念を借用することにより、法人税法上の組織再編成の対価も「組織再編成を行う法人の株式」に限定されていたと考えられます。

また、会社法制定後は会社法の概念を借用することにより、法人税法上の組織再編成の対価も「組織再編成を行う法人の株式」のみならず、金銭その他の資産(金銭、親会社株式、社債など)が認められることになったと考えられます。

法人税法上の「適格組織再編成」の対価

上記のように、法人税法上の「組織再編成」と認められるための対価は、会社法制定後において「組織再編成を行う法人の株式」のみならず、金銭その他の資産も認められることになりました。

それでは法人税法上の「適格組織再編成」と認められるための対価はどのようなものなのでしょうか。

法人税法上の「適格組織再編成」と認められるための対価は、原則として「組織再編成を行う法人の株式のみ」です。上図の例で言うと、原則として合併法人A社が合併の対価としてT社株主にA社株式のみを交付する場合に「適格合併」と認められます。

しかし時代の流れに伴い、対価として「組織再編成を行う法人の株式以外」を交付する場合も「適格組織再編成」と認められるような法改正がいくつかなされました。

たとえば、平成19年度の法人税法改正により、合併、分割、株式交換時に対価として完全親会社株式を交付する場合も適格と認められることになりました。

さらに平成29年度の法人税法改正により、組織再編成の対価として、一定の要件の下に金銭等を交付する場合にも適格と認められることになりました。

今回の話のメインは「三角合併」です。

三角合併とは合併の対価として「親法人株式」を交付するものです。つまり、組織再編成の対価として「組織再編成を行う法人の株式」以外を交付するものであるので、三角合併が認められるようになったのは平成17年の会社法制定以降ということになります。

ちなみに組織再編成の対価として「親法人株式」が交付される組織再編成は、合併以外に分割、株式交換が該当します。

キャッシュアウト・マージャー(交付金合併)

※ここはまだ「三角合併」の話ではありません。

キャッシュアウト・マージャーの概要

平成17年度会社法制定前は、組織再編成の対価は「組織再編成を行う法人の株式」のみでした。たとえば合併の場合、合併法人A社が合併の対価として被合併法人T社の株主に交付できるのは「A社株式」のみでした。

しかし、平成17年の会社法制定により、組織再編成の対価は「組織再編成を行う法人の株式」のみならず「金銭その他の資産」も認められることになりました。つまり、合併法人A社が合併の対価としてT社株主に金銭を交付することも認められるようになったということです。

そして対価の支払いが金銭のみで行われる合併のことを「キャッシュアウト・マージャー(交付金合併)」と言います。

キャッシュアウト・マージャーと「投資の継続」

たとえばA社がT社をキャッシュアウト・マージャーによって吸収合併する場合、T社株主には金銭が交付されます。つまりT社株主はT社株式を手放して金銭を取得しているので、その時点でT社株主の「投資の継続」は断たれています。

よって「非適格」としてT社株主とT社に課税されることになります。

対価のほとんどがA社株式+わずかばかりの金銭の交付

それではキャッシュアウト・マージャーではなく、対価のほとんどがA社株式であり、ごく一部の対価が金銭であった場合はどうでしょうか。

A社がT社株主に合併を承諾してもらうために、金銭を交付することが考えられます。この場合、当該金銭の交付はT社株主に合併を納得してもらうために交付したものであり、当該合併後もT社株主の投資は実質的に継続していると考えられます。

しかし、組織再編成が「適格」と認められるためには原則として、組織再編成の対価は「組織再編成を行う法人の株式」のみでなければならず、金銭が僅かでも対価に含まれていれば原則として非適格となります。

この点については平成29年度の法人税法改正により、組織再編成の対価として金銭等を交付した場合も特定の場合には「適格」と認められるように改正されました。

三角合併

ここからようやくメインの話である「三角合併」について解説します。

三角合併とは

三角合併とは、たとえばA社がT社を吸収合併するときに、対価としてT社株主にA社株式を交付するのではなく、A社の親法人であるP社株式を交付することです。

平成17年会社法制定前は、組織再編成の対価は「組織再編成を行う法人の株式」のみであり、三角合併のような組織再編成は認められていませんでした。しかし会社法制定により組織再編成の対価として「組織再編成を行う法人の株式」のみならず「金銭その他の資産」を交付することも認められることになりました。

つまり合併の対価として親会社株式を交付することも可能となったのです。

このように「三角合併」は会社法制定により認められるようになった組織再編成なのです。

三角合併が「適格」となる場合

三角合併は組織再編成の対価が「組織再編成を行う法人の株式」ではなく親会社株式なので、原則として「適格合併」にはなり得ません。

しかし平成19年度の法人税法の改正により、組織再編成の対価が「組織再編成を行う法人の株式」ではなく親会社株式である三角合併にも「適格」となる道を開けました。

以下のような三角合併が行われ、かつ法人税法に定める適格要件を満たせば、当該三角合併は「適格」となります。

・合併法人(A社)の親会社(P社)が合併法人を100%直接支配していること(直接完全支配関係がある事)
・合併において交付されるのが完全親会社株式(P社株)のみであること
・合併の直前にA社とP社の間に直接完全支配関係があり、かつ合併後も当該直接完全支配関係が継続することが見込まれていること

令和元年度改正

令和元年度改正において、合併法人(A社)の発行済株式の全部を間接に保有する関係にある法人(祖父会社など)の株式も組織再編成の対価として交付しても「適格」となる道が開けました(2条12号の8、施行令4条の3第1項等)。

三角合併と外国法人

平成17年の会社法制定前において、外国法人P社が内国法人T社を取得する方法を考えてみます。

当時の商法下においては、外国法人と内国法人の合併は認められないという考え方が主流でした。よって、外国法人P社が内国法人T社を取得する方法として、外国法人P社が内国法人A社を設立してA社がT社を合併により取得するという方法が考えられます。

しかしこの場合、合併の対価としてT社株主に交付されるのはA社株式(当時は組織再編成の対価として組織再編成を行うA社の株式しか交付できなかった)ということになり、T社株主にとってT社株からA社株に切り替わることに特に旨味がなければ、T社株主から合併の同意を得るのは容易ではないという問題がありました。

しかし、平成17年に会社法が制定されることで、A社が合併の対価として完全親法人である外国法人P社の株式を交付することができるようになりました。これは被合併法人の株主であるT社株主が合併によりP社株が交付されることを意味しますが、当該P社株式が市場で一般に売買されている流通性の高い株式であるなら、T社株主にとってP社株式は魅力的な株式であり、合併がスムーズに行われることが考えられます。

このように平成17年会社法制定により可能になった三角合併は、外国法人が日本の法人を取得したいとなったときに、当該取得をスムーズに行うことができる地盤となりました。加えて平成19年度法人税法改正により合併の対価が完全親法人株式である場合でも「適格」と認められることになり、より外国法人が日本の法人を取得しやすい下地が作られたと言えます。

三角合併は「株式交換と合併」の組み合わせ

三角合併は「株式交換と合併」の組み合わせと考えることもできます。以下の例を使って説明します。

たとえば、A社とその完全親会社であるP社、そしてT社がいたとします。

➀ 株式交換
まずはP社とT社株主の間で株式交換を行います。この株式交換によりP社はT社株を取得し、T社株主はP社株を取得するので、T社はP社の完全子会社、T社株主はP社株主になります。

➁ 合併
その後、A社がT社を合併により取得することで、合併の対価としてT社の株主であるP社にA社株を交付することになりますが、P社はA社の完全親会社であるため、P社にA社株は交付されません(無対価組織再編成、会社法749条1項3号)。

➀と➁が行われた後、T社はA社に取り込まれ、T社株主はP社株主となっています。これは三角合併が行われた後と同じ状況となります。

このように、三角合併は「株式交換+合併」と同じであるので、「株式交換+合併」がともに「適格」なら当該三角合併は「適格」となります。

よって会社法制定以前の、まだ三角合併を行うことができなかった時代においても、「株式交換+合併」を行うことにより、三角合併を行ったのと同じ結果を残すことができ、かつ「株式交換+合併」が適格なら、三角合併を適格で行うことが実質的にできたということです。

しかしP社が外国法人である場合、一般に国境を跨いだ株式交換はできないとされていたので、会社法制定以前は外国法人は「株式交換+合併」の手法を用いることができませんでした。

このような状況において、平成17年に会社法が制定されることで組織再編成の対価が親会社株式でもよくなり、かつ平成19年度法人税法改正により三角合併につき「適格」となる道が開けたことにより、外国法人が日本の法人を取得しやすい土台が出来上がったということです。

合併または三角合併が非適格となる場合

合併の対価が「合併法人A社と合併親法人P社」を混合したものであれば、そのような合併は「非適格」となります。

合併が「適格」となるためには「いずれか一方の株式」だけを交付する必要があります。

三角合併の適格性の根拠

三角合併の適格性の根拠は「三角合併は株式交換+合併の組み合わせ」という面から説明できます。

つまり、「株式交換+合併」が「適格」なら、当該三角合併も適格であろうということです。

その他にも三角合併の適格性の根拠は「投資の継続性」からも説明できます。三角合併により、被合併会社T社の株主であるT社株主は合併法人A社の親法人P社の株主になります。

つまり合併後、T社はA社に取得され、元T社株主(現P社株主)はP社を通じてA社に取り込まれた元T社に対して間接的に投資していると言えます。すなわち、T社株主のT社への投資は合併後も間接的にではありますが継続していると見ることができるのです。

対価として親会社株式が交付される分割、株式交換(三角組織再編成)

合併以外でも分割、株式交換において、組織再編成の対価として親会社株式を交付することができます。

たとえば吸収分割において、分割承継法人A社が分割の対価として、分割法人T社に、分割承継法人A社の親会社であるP社の株式を交付するような場合です。

また株式交換において、株式交換完全親会社A社が株式交換の対価として株式交換完全子会社T社の株主に、株式交換完全親会社A社の親会社P社の株式を交付するような場合です。

これらの組織再編成も合併の場合と同様に以下の要件を満たし、かつ法人税法に定める適格要件を満たせば、「適格」と認められることになります。

吸収分割
・分割承継法人(A社)の親会社(P社)が分割承継法人(A社)を100%直接支配していること(直接完全支配関係がある事)
・分割において交付されるのが完全親会社(P社)の株式のみであること
・分割の直前にA社とP社の間に直接完全支配関係があり、かつ分割後も直接完全支配関係が継続することが見込まれていること


株式交換
・株式交換完全親会社(A社)の親会社(P社)が株式交換完全親会社(A社)を100%直接支配していること(直接完全支配関係がある事)
・株式交換において交付されるのが完全親会社(P社)の株式のみであること
・株式交換の直前にA社とP社の間に直接完全支配関係があり、かつ株式交換後も直接完全支配関係が継続することが見込まれていること

親法人株式を交付した子法人への課税

通常の合併は、合併法人A社が被合併法人T社を取得して、その対価としてT社株主にA社株式を交付します。つまりA社はT社から出資を受けて、その出資に対してA社株を交付する取引なので資本等取引にあたり、課税の対象外となります(22条5項)。

これに対して三角合併は、合併法人A社が被合併法人T社を取得して、その対価としてT社株主にA社の親会社であるP社株式を交付します。つまりA社はT社から資産等の移転を受けて、その移転の対価として自社株ではなくP社株を交付する取引なので資本等取引にあたらず、P社株を交付するにあたりP社株の含み損益を実現し課税していくべきであると思われます。

この点61条の2第6項では、三角合併を適格合併により交付する場合の親会社P社の株式は、合併直前の帳簿価額により交付することが規定されています。たとえば合併法人A社が保有するA社の親会社であるP社株(ex帳簿価額120億円)を交付して適格合併を行なおうとするときは、合併直前にA社が保有するP社株の帳簿価額(120億円)により交付することになるので、A社において譲渡損益は生じないことになります。

ただし、合併法人A社が合併に係る契約日において、対価として交付する親会社株式(P社株式)をすでに保有している場合は、61条の2第23項によって、当該株式を時価で一旦譲渡し、かつ時価で再取得したとみなします。たとえばP社の帳簿価額100億円で時価が120億円なら、A社において含み益20億円を実現させて、P社株の帳簿価額を120億円に修正するということです。

また合併の契約日後に、合併法人A社が簿価取引によりP社株の移転を受けた場合、当該移転を受けた日において、P社株を譲渡し再取得したという擬制が行われます。たとえば合併法人A社がP社株を帳簿価額の80億円で移転を受けた場合、移転を受けた日の時価(ex120憶円)で譲渡して再取得したとみなし、P社株に含まれる含み益40億円はA社の下において実現し、P社株の帳簿価額を120億円に修正します。

要するに三角合併がたとえ適格であるとされても、親会社株式(P社株)の含み損益は合併法人A社の下で三角合併の段階で実現させ課税していくことになります。

この課税を受けないのは、合併法人A社が契約日に親会社株式(P社株)を保有していなくて、かつ契約日以後に市場などから時価取引によりP社株を取得するような場合です。

1株未満の端数に応じて交付される金銭

通常の合併が適格と認められるためには、原則として合併の対価として存続会社の株式のみが交付される必要があります。たとえばA社がT社を吸収合併する場合、当該合併が適格と認められるためには合併の対価としてA社株式のみが交付される必要があるということです。

そして三角合併が適格と認められるためには、原則として合併の対価として完全親会社の株式のみが交付される必要があります。たとえばA社がT社を三角合併により取得する場合、当該三角合併が適格と認められるためには合併の対価として完全親会社株式(P社株)のみが交付される必要があるということです。

しかしこのような合併は、被合併法人の株主が保有する被合併法人の株式数に応じて存続会社の株式や親会社株式が交付されるので、当該株式を被合併法人の株主に交付する場合に1株未満の端数が生じるときがあります。

たとえば通常の合併において、被合併会社の株式140株に対して存続会社の株式100株を交付する場合、被合併会社の株式10株を保有する株主は存続会社の株式を7,14・・・株(10株×100株/140株)交付されることになります。三角合併の場合も同様にこのような端数問題が生じます。

このような端数は株式を交付できないので、金銭を交付することになります。しかし、適格と認められるためには、通常合併の場合は原則として存続会社の株式のみが交付される必要があり、三角合併の場合は原則として完全親会社株式のみが交付される必要があります。

この点、三角合併が認められる以前の通常の合併につき端数が生じたため金銭交付をした場合でも、会社法234条などにより、当該合併を適格と認めることが可能でした。

しかし、三角合併が認められた当時、三角合併において端数が生じたため金銭交付をした場合に、当該三角合併を適格と認めるための明確な条文がありませんでした。そこで平成20年度改正により施行令139条の3の2第1項を設け、三角合併において端数が生じたため金銭交付をした場合も適格となることを明確にしました。

間接的な事業関連性要件

合併や分割、株式交換などにつき「適格」と認められる理由は「支配の継続」や「投資の継続」があるからです。

たとえばA社がT社を吸収合併することにより、T社株主にA社株を交付する場合、T社株主のT社への投資が、合併後においてもA社株を保有することでA社に取り込まれたT社への投資が継続していると言えます。そしてそこには「投資の継続」があるため「適格」として認められるということです。

そして三角合併によりA社がT社を吸収合併し、T社株主にA社の完全親会社であるP社株を交付する場合、T社株主のT社への投資が、合併後においてもP社株を保有することでA社に取り込まれたT社への投資がP社を通じて間接的に継続していると言えます。そしてそこには間接ではあるけれども「投資の継続」があると言えるため「適格」として認められるということです。

それでは共同事業再編成が適格と認められるための7つの要件(組織再編成➁参照)のひとつである「事業関連性要件」についても「間接的な関連性」を満たせば適格要件の一つを満たすことになるのでしょうか。

どういうことかと言うと、三角合併においてA社を合併法人、T社を被合併法人とし、合併の対価としてA社の完全親会社であるP社株式を交付する場合、T社の事業とA社の事業には関連性はないが、T社の事業とP社の事業に関連性があるなら、それは「事業関連性要件」を満たして当該三角合併が適格と認められるのか、ということです。

この点は、T社の事業とA社の事業に関連性がなければ適格要件を満たさないことになります。つまりT社の事業とP社の事業に関連性があるだけでは「事業関連性要件」を満たさず、T社の事業とA社の事業に関連性があって当該適格要件を満たすということです。

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