人が何らかの経済活動を行うとき、多くの場合、まずは事業体を作ります。
たとえば、法人や組合などの事業体を作ります。そのような事業体を作った上で活動した方が効率よく目的を達成できるため、人は事業体を作るのだと思われます。
そして、歴史の中で様々な事業体が作られ、それらの事業体を定める制度も制定・改正・廃止を繰り返してきたと思われます。その結果、今日では「会社、組合、信託、LLPなど」様々な事業体が存在します。そして課税上はこれらの事業体を「法人課税を受ける事業体」「法人課税を受けない事業体」「その中間型の事業体」の3つに分類して課税方法を定めていることになります。
今回は「法人課税を受ける事業体」「法人課税を受けない事業体」「その中間型の事業体」の3つの課税方法などについて詳しく見ていきます。
ちなみに「事業体」とは英語で「エンティティ」と言います。
「法人課税を受ける事業体」「法人課税を受けない事業体」「その中間型の事業体」に対する課税方法
✔概説
冒頭で述べたとおり、課税上の観点から事業体を分類すると、「法人課税を受ける事業体」「法人課税を受けない事業体」「その中間型の事業体」の3つに大きく分けられます。
そして「法人課税を受ける事業体」を左端、「法人課税を受けない事業体」を右端、「その中間型の事業体」を真ん中というイメージをして下さい。

左端の「法人課税を受ける事業体」の典型例が「株式会社」です。株式会社は会社とその構成員である株主から構成されています。そして株式会社という事業体に対する課税は、「会社本体に対して法人税を課税し、配当を受け取る株主に対しても課税する」という課税方法を採用しています。
これに対して右端の「法人課税を受けない事業体」の典型例が「民法上の組合」です。組合は組合本体とその構成員である組合員から構成されています。そして組合という事業体に対する課税は、「組合本体には課税せず、組合の損益を組合員に帰属させ、組合員に直接課税する」という課税方法を採用しています。
そして「中間型の事業体」に対する課税は、両者の中間型の課税方法を採用しています。
これら3つの課税方法は「課税の負担者や課税のタイミング」などが異なります。
つまり、自己が選択した事業体がどのように課税されるのかは、その選択した事業体が「法人課税を受ける事業体」「法人課税を受けない事業体」「その中間型の事業体」のどれに分類されるのかにより決まります。
✔「法人課税を受ける事業体」の課税方法
「法人課税を受ける事業体」に対する課税には以下の4つの特色があると言われます。
① 法人税の納税義務を負う
➁ 二段階課税を受ける
➂ 法人(または法人とみなされる団体)からの構成員に対する利益の分配が「配当」と性質決定される
➃ 損失の分配はできない
上記①~④の特色を「法人課税を受ける事業体」の典型例である株式会社で説明すると以下のようになります。
株式会社は、会社本体と株主から構成されています。株式会社では会社本体が事業活動を行って所得を獲得し、当該所得を株主に分配することになります。
このとき、会社本体が獲得した所得に対して法人税が課税され、会社は法人税の納税義務を負います(①)。そして会社から株主に配当がなされると株主の配当所得となり、株主に課税されることになります。つまり会社本体に対する課税と株主に対する課税の二段階の課税がなされるのです(②)。
③は会社本体から株主に対して行われる利益の分配が、株主にとって「所得(配当所得)」として扱われるということです。会社から株主に対してなされる利益の分配は「金銭等の移転」です。「金銭等の移転」はたとえばお金を借りた場合でも起こります。お金を借りた場合、「借主に所得が生じた」とは考えません。つまり「金銭等の移転」にも当該金銭等を受け取った側で「所得となる場合」と「所得とならない場合」がありますが、会社本体から株主への利益の分配(金銭等の移転)は金銭等を受け取った株主側で所得となる、と言うことを説明しているのです。
➃について。会社本体の事業活動で生じた収益、費用・損失は会社に帰属し、その差額である利益が株主に分配される仕組みです。つまり、会社の事業活動で生じた費用・損失がそのまま株主に帰属することはないということです。
また、①には例外があります。たとえば公共法人(2条5号)は法人税の納税義務を負いません(4条2項)。また公益法人等(2条6号)は収益事業から生じた所得に限り課税され、法人税の納税義務を負います(4条1項・6条)。
そして②について、会社本体が獲得した利益に対して法人税を課し、課税後の利益を株主(個人)に配当を行って課税すると、「一つの経済的利益に2回課税されている」ことになり、二重課税が問題となります。この点、所得税法には配当控除制度(所得税法92条)が存在し、当該二重課税を部分的に解消する制度が設けられています。
✔「法人課税を受けない事業体」の課税方法
「法人課税を受けない事業体」への課税は、「法人課税を受ける事業体」への課税に見られる上記4つの特色を全て備えていません。「法人課税を受けない事業体」への課税の特色をこの4つの特色から見ると以下のようになります。
① 法人税の納税義務を負わない
➁ 一段階目の課税は受けず、二段階目の課税のみ受ける
➂ 事業体本体から構成員に対する利益の分配が「配当」と性質決定されない
➃ 損失の分配ができる
上記①~④の特色を「法人課税を受けない事業体」の典型例である民法上の組合で説明すると以下のようになります。
民法上の組合は、組合員が出資を行って組合本体を作り、組合本体が事業活動を行います。組合本体が事業活動を行うことにより生じた収益、費用・損失は、組合本体に帰属せず、パス・スルーして組合員に帰属します。このように組合本体では収益から費用・損失を差し引いて利益を計算するということを行わないので、組合本体に所得は発生せず、法人税は課税されないので、組合本体は法人税の納税義務を負いません(①)。
そして組合本体の収益、費用・損失は組合本体をパス・スルーして組合員に帰属するため、組合員に対して課税されます。つまり、組合本体への課税(一段階目の課税)は受けないけど、組合員への課税(二段階目の課税)は受けるということです(②)。
③については、民法上の組合も組合本体が獲得した利益を組合員に分配しますが、組合本体から組合員への利益の分配を組合員の所得として扱いません。これは組合本体の収益、費用・損失はパス・スルーして組合員に帰属し、組合本体の所得(収益ー費用・損失)は組合員の所得とすでになっているため、組合本体の組合員への利益の分配を組合員の所得とすると、組合員が同じ所得を2回計上することになるからです。
④については、組合本体の事業活動により生じた収益、費用・損失は組合本体をパス・スルーして組合員に帰属するため、組合本体の損失等はそのまま組合員に帰属させることができるという意味です。
✔「中間型の事業体」の課税方法
「中間型の事業体」への課税の特色は、②を除いて「法人課税を受ける事業体」への課税の特色と同じとなります。
① 法人税の納税義務を負う
➁ 二段階課税を受ける場合と受けない場合がある
➂ 事業体本体から構成員に対する利益の分配が「配当」と性質決定される
➃ 損失の分配はできない
「中間型の事業体」の課税方法を一言で言えば、「分配利益損金算入型」ということです。
これは事業体本体が事業活動を行うことにより所得を獲得した場合、当該所得を構成員に分配すれば、その分配額は損金算入され、事業体の所得が減少し、その部分につき法人課税を受けないという仕組みです。ただし、事業体本体が獲得した所得を分配せずに事業体本体に留保した場合、その所得には法人税が課されます。
よって事業体本体が獲得した所得を構成員に分配せず、法人税が課された場合は、その事業体本体には法人税の納税義務が生じます(①)。そしてこの法人税が課された所得を構成員に分配した場合は、その構成員の所得となり(③)課税されるので、二段階課税を受けることになります(②)。なお、基本的に一旦法人税が課された所得を構成員に分配した場合は、その部分を損金算入することはできません。
そして事業体本体が獲得した所得を構成員に分配した場合は、その部分は損金算入され法人税課税を受けませんが、当該分配は構成員の所得となる(③)ので、構成員に課税されます。つまりこの場合、事業体本体は課税を受けず、構成員のみ課税を受けるので、二段階課税を受けないことになります(②)。
③は事業体本体から構成員への利益の分配が、構成員にとって「所得」となるいうことです。事業体本体から構成員への利益の分配は「金銭等の移転」です。「金銭等の移転」はたとえばお金を借りた場合でも起こります。お金を借りた場合、「借主に所得が生じた」とは考えません。つまり「金銭等の移転」にも当該金銭等を受け取った側で「所得となる場合」と「所得とならない場合」がありますが、事業体本体から構成員への利益の分配(金銭等の移転)は金銭等を受け取った構成員側で所得となる、と言うことを説明しているのです。
➃について。中間型の事業体は、事業体本体の事業活動で生じた収益、費用・損失が事業体本体に帰属し、その差額である利益が構成員に分配される仕組みです。したがって、事業体本体の費用・損失がそのまま構成員に帰属することはありません。
「法人課税を受ける事業体」
事業体には「会社、組合、LLP、LLC、特定目的会社、投資法人、匿名組合などなど」様々存在しますが、これらの事業体は課税上「法人課税を受ける事業体」「法人課税を受けない事業体」「その中間型の事業体」のいずれかに分類され、それぞれに定められた課税を受けることになります(下はイメージ図)。

このうち、まずは「法人課税を受ける事業体」について確認します。
「法人課税を受ける事業体」の代表例として、法人税法上の5つの法人のうち、公共法人を除く残り4つの法人「公益法人等(収益事業を行う場合のみ)、人格のない社団等、協同組合等、普通法人」があります。
人格のない社団等は法人格を有しませんが、法人税法上は法人格を有するものとみなされます。このことから「法人課税を受ける事業体」(事業体本体において1段階目の課税を受け、構成員に利益が分配されたときに構成員に2段階目の課税を受ける事業体)は「法人」だけに限定されない、ということになります。
また協同組合等は、法人格を有しない民法上の組合(任意組合)と異なり、農業協同組合法、消費生活協同組合法などの個別法に基づいて設立される組合であり、法人格を有することになります。
「法人課税を受けない事業体」
続いて「法人課税を受けない事業体」として「①民法上の組合、②有限責任事業組合(LLP)、③LPS(リミテッド・パートナーシップ)」などがあります。
①民法上の組合
✔概説
法人税法4条1項において、法人税の納税義務者が規定されていますが、この中に民法上の組合は含まれていません(法人税基本通達1-1-1)。したがって、民法上の組合には法人税の納税義務はありません。
このように民法上の組合は法人課税を受けないので、「法人課税を受ける事業体」には含まれないことになります。
そして組合の財産は民法668条によって総組合員の共有(合有)に属するので、組合の損益も組合本体をパス・スルーして組合員に帰属すると考えられています。
よって民法上の組合は「法人課税を受けない事業体」に分類され、組合員に直接課税されることになります(いわゆるパス・スルー課税)。言い変えると「組合本体に対する課税(1段階目の課税)は受けず、構成員段階での課税(2段階目の課税)のみ受ける」ことになります。
✔民法上の組合に対する具体的な課税ルールは法律上規定されていない
民法上の組合は「法人課税を受けない事業体」に分類され、組合員段階での課税を受けることになりますが、当該組合員に対する課税ルールが税法上定められていません。
よって実務上、民法上の組合員に対する課税は、通達や裁判例を参照することになります。
民法上の組合員に対する課税ルールが法律で定められていない理由は、「法律によって定めようとすると、あまりにも複雑になってしまうので、あえて定めない方が実務上、適切に対処できるためである」と考えられます。
✔組合課税に関する通達
組合課税については通達にいくつか定めがあります。
組合員が個人の場合の組合事業に係る損益の帰属時期については以下のように記載されています。
任意組合等の組合員の組合事業に係る利益の額又は損失の額は、その年分の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入する
ただし、組合事業に係る損益を毎年1回以上一定の時期において計算し、かつ、当該組合員への個々の損益の帰属が当該損益発生後1年以内である場合には、当該任意組合等の計算期間を基として計算し、当該計算期間の終了する日の属する年分の各種所得の金額の計算上総収入金額又は必要経費に算入するものとする
(所得税基本通達36・37共ー19の2)
前段はたとえば「2026年度の組合事業の損益を、当該組合員の2026年の所得に含める」ということです。
後段はたとえば「組合の計算期間が4月1日から翌年3月31日までであり、その計算期間が2026年3月31日に終了した場合、その計算期間に係る組合事業の損益は、その終了日の属する2026年の組合員の所得に含められる」ということです。
また、損益の計算について通達は以下の3つの方法を定めています。
➀当該組合の事業に係る収入金額、支出金額、資産、負債等を、その分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
➁当該組合の収入金額、その収入金額に係る原価の額および費用の額並びに損失の額をその分配割合に応じて各組合員のこれらの金額として計算する方法
➂当該組合について計算される利益の額または損失の額をその分配割合の応じて各組合員に按分する方法
しかし、たとえば組合員が持分権を譲渡した場合の当該持分権の取得価額をどのように算定するかが法律上明確に定められていないので、持分権の譲渡益(譲渡対価ー取得価額)の算定に困難が生じるなどの問題が発生してしまいます。
✔組合とリース取引
過去に民法上の組合とリース取引を組み合わせた租税回避行為が行われました。今現在では、当該租税回避スキームは個別的否認規定により対処されていますが、その当時どのような租税回避行為が行われたのかについて説明します。
租税回避スキームの仕組みを簡単な例をあげて説明すると以下のとおりです。
組合員AとBは2億円ずつ出資して民法上の組合を作りました。そして、組合本体は銀行から12億円を借り入れました。これにより「出資額4億円+銀行からの資金調達額12億円」を合わせた16億円で資産αを購入しました。銀行からの借入れ12億円は資産αを担保にしました。担保の内容は「債務者が資産価値以上の返済義務を負わない借入(有限責任借入)」というものです。つまり担保である資産価値がいくら下落しても、資産価値以上の返済義務を負わないという内容です。
資産αには即時償却が認められます(資産購入初年度に取得価額の全額の減価償却費の計上が認められるものであり、あえてそのような資産を購入した)。そして資産αをリースすることにより、年間2億円のリース料収入を得られるようにしました。
この場合、組合本体に「減価償却費16億円、リース料収入2億円」が計上されますが、当該損益はパス・スルーして組合員A・Bの損益となります。つまり組合員A・Bには、それぞれ「減価償却費8億円、リース料収入1億円」が帰属します。
そうすると、もしも組合員Aに課税所得が7億円あるならば、当該費用7億円(減価償却費8億円ーリース料収入1億円)と相殺することで課税所得をゼロにできます。つまり、租税回避が行えてしまうのです。
ところで、民法上の組合の組合員は無限責任を負います。つまり、組合本体の債務について無限に責任を負うということです。しかし本事例では、銀行からの借入12億円については資産価値を限度として返済義務を負うだけなので、この借入金12億円について、組合員A・Bは実質的に返済責任を負っていません。そうすると「組合員A・Bがそれぞれ負っているリスクは出資額の2億円のみであり、それぞれ2億円のリスクしか負っていないにもかかわらず、税務上7億円の控除を享受できる」ことになります。これはおかしな話であり、2億円のリスクしか負っていないなら、税務上も2億円のみの控除だけを認めるべきです。
これが民法上の組合とリース取引を組み合わせた租税回避スキームの仕組みです。
この種のスキームを利用した事件が「大阪高判平成12年1月18日訴月47巻12号3767頁、パラツィーナ事件」です。パラツィーナ事件では上記の資産αは映画のフィルムでした。上告審である最判平成18年1月24日民集60巻1号252頁では、「映画フィルムを組合の事業の用に供しているとは言えないから、映画フィルムは31条1項の減価償却資産に当たらない」と判決しました。資産は事業の用に供して初めて減価償却費を計上できますが、今回の事件では映画フィルムは事業の用に供されておらず、よって減価償却費の計上は認められず、生じていない減価償却費を組合員に帰属させることはできないため、組合員の所得から当該減価償却費を控除できない、というのが最高裁の理屈です。
また同じ手法を使った事件として名古屋地判平成16年10月28日判タ1204号224頁があります。これは航空機リースを利用した租税回避スキームですが、こちらの事件では納税者が勝訴して租税回避が成功しました。
この手の租税回避は平成12年度に裁判となりました(パラツィーナ事件)。そして同じような事件が平成16年度において裁判となり、この時は租税回避を防ぐことができませんでした。そうすると平成12年の段階で当該租税回避スキームを認識出来ているので、その時に当該スキームを否認するための個別的否認規定を設けることができたと言えます。しかし、その対応が遅れたため、平成16年度において同じ租税回避スキームを使った事案については租税回避を防ぐことができませんでした。その後平成17年度改正で当該租税回避スキームを否認するための法律が制定されることになりました(租税特別措置法41条の4の2、67条の12)。
個別否認規定である租税特別措置法67条の12第1項を数値を用いて簡単に説明すると、「組合が債務(12億円)を負担した場合、それを弁済する責任の限度が実質的に組合財産の価額とされているときは、組合損失額(14億円)のうち組合員が出資をした額(4億円)を基礎として計算した額(調整出資金額)を超える部分(組合損失超過額)は組合員に帰属させることはできない」ということです。
②有限責任事業組合(LLP)
平成17年度に、有限責任事業組合(日本版LLP)が導入されました。
LLPは、民法上の組合と同じくパス・スルー課税が採用されており、組合本体には課税せず、組合員に対してのみ課税します。
LLPと民法上の組合の違いは、組合員の責任が有限か無限かという所です。民法上の組合では組合員は組合本体の債務について無限責任を負うのに対し、LLPでは組合員は出資額を限度とする有限責任しか負いません。
そうすると、LLPの制度設計をする上で「LLP本体の損失の全額を組合員に帰属させてもよいのか」という問題が発生します。
例えば、組合員が2億円を出資してLLPで事業を行い、その結果、組合本体に10億円の損失が生じたとします。LLPはパス・スルー課税であるため、本来であればこの10億円の損失は組合員に帰属します。すると、組合員に10億円の所得がある場合には、その所得と相殺して税負担をなくすことができてしまいます。
しかし、このような取扱いは適切ではありません。組合員が実際に負担しているリスクは出資額の2億円であり、10億円全額の損失が組合員に帰属すること認めると、リスクを負わない8億円部分についてまで税務上控除できることになってしまうからです。
そこで税法では、組合員に帰属させることができる損失は、その組合員の出資額を基礎として計算した金額の範囲内に制限しています(租税特別措置法39条の12第2項、67条の13第1項)。
ところで、LLPは事業者の経済活動の選択肢を増やしたり、経済活動の柔軟性を促進するために導入されたと考えられます。LLPは特に「事業者の独立した活動は維持したいけど、他の事業者と共同して新たな事業の可能性を広げたい」という要望を満たすような仕組みとなっています。
たとえばある企業が「失敗リスクはできるだけ抑えたいけど、甲企業および乙企業と共同して新事業を展開したら、もしかすると上手く行くかもしれない」と考えた場合、組織再編成を使わずLLPを利用することで、企業の独立性を維持しつつ、リスクは出資額を限度として負うのみであり、かつ共同で事業を行うことで新事業を開拓できるかもしれない、という企業側の望みを実現させることができます。
上手くいけばラッキーだし、もし失敗しても出資額を失うのみであり、企業自体は存続させることができるのです。
✔③LPS(リミテッド・パートナーシップ)
米国デラウェア州の法律に基づいて設立されたLPS(リミテッド・パートナーシップ)に日本の居住者が出資してLPSの構成員(パートナーシップ)になった場合、LPSが行う事業から生じた損失につき、パス・スルーして出資者である日本の居住者の所得から控除できるかが争われた事件があります(最判平成27年7月17日民集69巻5号1253頁)。
この事件も上記のリース取引を利用した租税回避スキームと本質的には同じです。つまり租税回避目的でLPSにおいて損失を作り、これを組合員に帰属させて租税回避を行うというものです。
この事件におけるLPSはアメリカではパス・スルー・エンティティ(法人課税を受けない事業体)としての扱いを受けていました。すなわち、アメリカ法では当該LPSは「法人格なし」として取り扱われていたということです。
そしてこの事件で最高裁が問題にしたのは「アメリカで設立された当該LPSが日本の法人税法2条4項および日本の所得税法2条1項7号に定める外国法人に当たるか否か」、つまり、「アメリカで設立されたLPSは日本法に照らして法人と言えるかどうか」という所です。もしもLPSが日本法に照らして外国法人に該当したなら、法人で生じた損失はその構成員にパス・スルーして帰属させることはできないから、当該LPSに出資した日本の居住者はLPSの損失を自己に帰属させることはできないことになります。
この点、最高裁は法人該当性について以下の2つを示しました。
➀当該組織体に係る設立根拠法令の規定の文言や法制の仕組みから、当該組織体が当該外国の法令において日本法上の法人に相当する法的地位を付与されていることまたは付与されていないことが疑義のない程度に明白であるか否かを検討し、これができない場合には、次に、②当該組織体が権利義務の帰属主体であると認められるか否かについて、当該組織体の設立根拠法令の規定の内容や趣旨等から、当該組織体が自ら法律行為の当事者になることができ、かつ、その法律効果が当該組織体に帰属すると認められるか否かという点を検討する
そして最高裁は主として➁の基準に基づき、本件LPSは権利義務の帰属主体であると認められると判断して、法人該当性を肯定しました。その結果、本件LPSは外国法人とされ、本件LPSの損失を構成員である日本の居住者に帰属させることはできないと判決しました。
「中間型の事業体」
「中間型の事業体」として「①特定目的会社、投資法人、②特定目的信託、特定投資信託、③匿名会社」などがあります。これらについて見ていきます。

①特定目的会社、投資法人
✔特定目的会社
特定目的会社(SPC)は資産流動化法により設立される法人です。法人であるので「法人課税を受ける事業体」に分類されるのかというと、そうではなく「中間型の事業体」に分類されることになります。このように法人格があれば、必ず「法人課税を受ける事業体」に分類される訳ではなく、「中間型の事業体」に分類されることもあります(ただし、法人格を有する事業体が「法人課税を受けない事業体」に分類されることはありません)。
特定目的会社の制度が定められた一番の目的は、「収益を生み出す資産(またはこれから収益を生み出す資産)を用いて資金調達したい」という事業者の要求に答えるためであると考えられます。
「収益を生み出す資産」として、たとえば「賃料収入のある不動産、利息収入のある債権、リース料収入のある資産」などがあります。これらの資産により資金調達する方法として「当該資産を売却する、当該資産を担保として資金を借り入れる」というのがあります。特定目的会社の制度が定められた大きな理由は「収益を生み出す資産を利用した資金調達方法の選択肢を増やすため」であると思われます。
特定目的会社を利用した資金調達の仕組みは以下のとおりです。
たとえばA社は、「収益を生み出す資産β」を用いて資金調達しようとする場合、まずは特定目的会社B社を設立し、B社に資産βを売却します。その後、資産βの移転を受けたB社は、当該資産から生じる収益を得ることのできる権利を表彰した証券を発行し、投資家から資金調達します。そしてB社が証券を発行することで調達した資金を資産βを取得した対価としてA社に支払います。このようにしてA社は資金調達を行うのです。
なお、特定目的会社への資産の移転は「リスクの切り離し」という意味合いもあります。
たとえば、資産甲を保有するA社には倒産リスクがあるとします。この場合、A社が特定目的会社であるB社を設立し、資産甲をB社へ譲渡すると、資産甲の所有権はB社に移転します。その結果、A社が倒産したとしても、原則としてB社や資産甲には影響が及びません。つまり、B社が発行する証券に係る配当は資産甲から生じる収益を原資とするため、B社への投資家はA社の倒産リスクから切り離された形で投資を行うことができます。このように、投資家はA社の倒産リスクを気にすることなく、安心して証券を購入できるため、資金調達が円滑となります。
また反対に、A社がリスクのある資産乙を保有している場合、特定目的会社B社を設立し、資産乙をB社に移すことで、A社からリスクのある資産を切り離すこともできます。
✔投資法人
投資法人とは、多数の投資家から資金を調達し、その資金を運用することで利益を得て、その利益を投資家に分配するというものです。
投資法人も「法人」ですが、課税上は「中間型の事業体」として分類され課税されることになります。
✔なぜ法人格を有する特定目的会社や投資法人は「法人課税を受ける事業体」に分類されず、「中間型の事業体」に分類されるのか?
投資家の中には安定した利益の分配を望む者もいます。このような投資家の要求に答えるために作られた制度が特定目的会社や投資法人です。特定目的会社や投資法人の事業は、特別法により資産運用事業に限定され、その他の事業を行うことを制度上禁止しています。さらに、資産運用を行う場合の投資対象も制限されています。このような仕組みを整えることで、資産運用以外の事業を始めて余計なリスクを抱えることを防止できるので、投資家は安心して投資できるのです。
このように特定目的会社や投資法人は、資産から生じる収益を投資家に還元するための器として利用されるため、通常の事業会社のように法人そのものに利益を蓄積させることを目的としていません。よってこのような法人には「法人課税を受ける事業体」として課税するのではなく、「中間型の事業体」として課税するのです。
✔特定目的会社や投資法人は具体的にどのような課税を受けるのか
これらの法人が一定の条件の下で配当可能利益の額の90%超を配当した場合、当該配当部分に法人税は課されません(租税特別措置法67条の14・67条の15)。つまり、配当可能利益の額の90%超を配当をした場合はその配当部分は損金算入され、その部分につき法人課税を受けないということです。よってパス・スルー課税の要素を取り入れた分配利益損金算入型の課税方法を採用していることになります。なお、一定の条件を満たさず配当した場合や配当可能利益の額の90%以下しか配当しなかった場合は、その配当部分につき損金算入は認められず、法人課税がなされることになります。また、配当可能利益の額の90%超を配当した場合に、配当しなかった部分には法人課税がなされます。
②特定目的信託、特定投資信託
平成12年度の資産流動化法および投資信託法の改正により、特定目的信託および特定投資信託の制度が導入されました。
これらは特定目的会社や投資法人を信託の形でも行えるようにするための改正だと思われます。
信託は基本的には「委託者、受託者、受益者」の三者から構成されます。委託者は自己が保有する資産を受託者に引渡し、受託者は委託者の目的に沿った資産の運用を行うことにより、そこから生じた利益を受託者に与えます。
このように信託を利用した場合、資産の移転や信託財産の運用による所得が発生するのでこれらに課税していかなければなりません。そして信託では、信託財産から生じる利益を受けることになる受益者に課税するのが原則です。
それでは投資法人と同じことを特定投資信託の仕組みで行った場合、どのようになるのでしょうか。委託者である投資家は、資産運用を行う受託者に資金を提供し、当該資金を運用することで得られた利益を受益者である投資家に与えることになります。そして信託は原則受益者課税です。そうすると受託者である資産の運用会社が資産を運用することで得た利益を受益者に分配しなかった場合、当該運用益に課税できず、資産の運用益に対する課税が繰延べられるという問題が発生します。そこでこれを防ぐために、特定投資信託に対して法人課税がなされることになります。特定投資信託に対して法人課税がなされるとは、信託の受託者を法人税の納税義務者として課税することです。このように特定投資信託に法人課税を行うことで信託財産の運用益に対する課税の繰延を防止することができるのです。
なお、特定目的信託も特定投資信託と同じように法人課税を受けて、特定目的信託の受託者を法人税の納税義務者として課税します。
しかし、特定目的信託や特定投資信託につき、法人課税を受けると言っても、「法人課税を受ける事業体」に分類されて課税されるのではなく、「中間型の事業体」に分類されて課税されることになります。つまり特定目的信託や特定投資信託も特定目的会社や投資法人と同じように「分配利益損金算入型」の課税を受けることになります。したがって受託者が分配可能利益の額の90%超を受益者に分配した場合には、分配部分は損金算入され、その部分につき法人課税を受けません(租税特別措置法68条の3の2、68条の3の3)。ただし、受託者が分配可能利益の額の90%以下しか分配しなかった場合には分配部分の損金算入は認められずその部分につき法人課税を受けます。また、90%超分配しても、分配しなかった部分につき法人課税を受けます。このように特定目的信託や特定投資信託はパス・スルー課税を一部取り入れた分配利益損金算入型の課税方法を採用していることになります。
③匿名組合
匿名組合は、匿名組合員が出資を行い、その出資を受けた営業者が事業を行うというものであり、基本的には匿名組合員は出資だけを行い、営業者は事業のみを担当することになります。
匿名組合には「匿名」という名称が付されていますが、この「匿名」とは「営業者の取引の相手方が営業者に対する出資者(匿名組合員)を知ることができない」という意味です。よって営業者と匿名組合員はお互いのことを認知しています。
匿名組合は商法上規定されていて、「営業から生じる利益を分配することは匿名組合の要素」とされています(商法535条)。損失が生じた場合はその損失額だけ出資額を減少させ、損失が生じた後に利益を獲得したときは、減少させた出資額を補填した後でなければ、利益の配当を請求できないとされています(商法538条)。この商法上の規定から、匿名組合における損失は、匿名組合本体をパス・スルーして匿名組合員に帰属させることはできないと解釈できます。
また、所得税基本通達36・37共-21の2は「営業者が匿名組合員に分配する利益の額は、当該営業者の当該組合事業に係る所得の金額の計算上必要経費に算入する」としているので、匿名組合を分配利益損金算入型エンティティと捉えていると考えられます。匿名組合が分配利益損金算入型エンティティなら、特定目的会社等と同じように、匿名組合本体の損失を匿名組合員に分配できないと考えるのが一般的です。
ところで租税法は、法律違反の行為がなされた場合、その行為より所得が生じたり配当がなされたのであれば、それを前提に課税関係を構築します。たとえば「蛸配当」のように会社法違法の配当であっても、株主が実際に配当を受け取ればそれに対して課税を行います。つまり租税法は現実に生じた事実を基礎に課税を行うことになります。
そうであるなら、商法に違反して組合本体の損失を匿名組合員に分配した場合には、その行為を前提に課税関係が構築されるのでしょうか。
この問題については以下の①~④の判断材料を用いて検討してみたいと思います。
① 匿名組合の当事者が契約で「組合本体の損失を匿名組合員に分配する」という商法違反の約束をした場合、その契約自体を否認できる規定は所得税法や法人税法には見当たりません。よって、税法に基づいて当該契約を否認できません。
② 最判平成27年6月12日民集69巻4号1121頁は、匿名組合契約に基づき航空機リース事業が行われた事例ですが、当該判決では匿名組合から組合員に損失等の分配が行われたことを当然の前提として裁判所が課税判断を行っていると考えられます。
③「商法に違反して組合本体の損失を匿名組合員に分配した場合には、その行為を前提に課税関係が構築されるのか」という問題に関しては、平成17年度改正で導入された租税特別措置法67条の12の規定も参考になります。この規定はすでに説明したとおり、多額の減価償却が認められる資産を組合が借入金を利用して購入してリースすることで、減価償却費とリース料の差額を組合員の損失等として計上するようなスキームを防止するために、租税特別措置法41条の4の2とともに、平成17年度改正で導入された個別否認規定です。そして、この規定の「特定組合員」には匿名組合の組合員も含まれうるという作りになっています。つまり、この規定は組合本体の損失を匿名組合員に負担させることが前提となっているのです。
④ 租税特別措置法67条の12は組合員が法人の場合の規定ですが、組合員が個人の場合は租税特別措置法41条の4の2で定められています。この措法41条の4の2では、損失等の分配を受ける者の中に匿名組合員は含まれていません。この点立案担当者の解説では「法人税については匿名組合契約も損失制限の対象とされる一方で、所得税については除外されている理由として、個人の組合員が営業者から分配される利益は基本的には雑所得として扱われ、損失について損益通算が認められていないので、あえて損失制限の対象とする必要性に乏しいから」と説明しています。つまり、この規定も匿名組合員に損失を負担させることが前提となっているけど、匿名組合員に損失を負担させても当該損失等は匿名組合員の雑所得となり、損益通算できないので、41条の4の2に匿名組合員を含めなくても、匿名組合員の租税回避行為は防ぐことができるから、ということです。また、現行所得税基本通達36・37共-21は、匿名組合契約を締結する者で当該匿名組合契約に基づいて出資をする「匿名組合員」が当該匿名組合契約に基づく営業者から受ける利益の分配を雑所得としています。
以上から「商法に違反して組合本体の損失を匿名組合員に分配した場合には、その行為を前提に課税関係が構築されるのか」という問題に関しては、条文や通達、判例を見る限り「YES」ということになります。

