ある人が亡くなった場合、その配偶者や子供などはその人の財産を相続することができます。
このような相続権(被相続人の財産を相続する権利)は当たり前の権利として捉えらえていると思われますが、相続権の保障は日本国憲法に規定されていません。他国を見ると、ドイツの憲法(ドイツ連邦共和国基本法)14条において相続権を保障しています。
今回はこの「相続権」について見ていきたいと思います。
「所有権」と「相続権」
「所有権」とはある人が何らかの「モノ」を持っている場合、その「モノ」を自由に扱える権利のことです。
つまり、ある「モノ」の所有権者は、その「モノ」を使ったり、捨てたり、壊したり、売ったり、貸したり、あげたり、、、基本的には自由にその「モノ」を扱うことができます。
そしてある人が何らかの「モノ」を持っている場合で、その人が死亡したとき、その人はその「モノ」を死後の世界に持っていくことはできません。
自分が死んで、死後の世界に「モノ」を持っていけないとなったときに、多くの場合その「モノ」を自分の親族にあげたいと思うはずです。
つまり、自分が死ぬときに、家族に自分が持っているモノをあげる(相続させる)というのは、死ぬ直前に行った「家族にモノをあげる」という最後の所有権の権利行使に他なりません。
死ぬ人が死ぬ直前に「家族に自分が持っているモノをあげる」という所有権の権利行使を行うことで、その相続人には相続権(被相続人の財産を相続する権利)が生じると言えます。
このように考えると、「相続権」は被相続人の最後の所有権の権利行使により必然的に生じる権利と考えることができます。
このような「相続権」(被相続人の財産等を相続する権利)は民法で規定されています(民法887条、889条、890条等)。
相続禁止となった場合
もしも、ある人からその人の配偶者や子供などへの相続を禁止したら、どのようなことが考えられるでしょうか。
以下に考えられることを列挙します。
➀ 被相続人の所有権を制限することになる
➁ 生前贈与が規制される
➂ 第三者を介した親から子などへの財産移転が規制される
以下順番に説明します。
✔➀ 被相続人の所有権を制限することになる
相続を禁止するということは、言い換えれば「被相続人の死亡直前の最後の所有権の権利行使である『自分の親族などに自分の財産を譲るという行為』を禁止する」ということであり、これは被相続人の所有権を制限することを意味します。
✔➁ 生前贈与が規制される
相続が禁止されるなら、生前に贈与してこれを回避しようとする動きが生じると思われます。したがって、これを防ぐために生前贈与に規制がかかることが予想されます。
✔➂ 第三者を介した親から子などへの財産移転が規制される
生前贈与が規制されるなら、第三者を介して売買という形を通じて親から子などへの財産移転がなされると考えられます。そしてこれを規制するには世の中の取引を監視して、所有権の移転に制限をかけていく必要があると考えられます。
世の中の取引を監視して、所有権の移転に規制をかけていくことは、円滑な経済活動を阻害することになります。
このように相続を禁止すると、被相続人の所有権の権利行使を制限し、相続禁止を回避するための行動を誘発し、日常の取引による所有権の移転を阻害することになるため、相続制度は確保されなければならないのです。

