信託の概要

信託とはシンプルにいうと「AさんがCさんに利益を与えるために、Aさんの保有する財産ををBさんに託し、Bさんがその財産を管理・運用することでその利益をCさんに与える仕組み」です。

信託にはさまざまな類型があり、上記の信託に当てはまらない信託もありますが、信託の基本的なイメージとしては上のとおりです。

このような信託の仕組みは、社会的な必要性に応じて生まれ、発展してきたものであります。

今回は、まずは信託の概要について大まかに説明したいと思います。

信託の登場人物と課税方法

繰り返しますが、信託とはシンプルにいうと「AさんがCさんに利益を与えるために、Aさんの保有する財産をBさんに託し、Bさんがその財産を管理・運用することでその利益をCさんに与える仕組み」です。

この場合、Aさんを「委託者」、Bさんを「受託者」、Cさんを「受益者」と呼びます。そしてAさんがBさんに託したAさんの当該財産のことを「信託財産」と言い、信託財産から生じる所得を得ることのできる権利を「受益権」と言います。

信託がなされると財産が移動したり、運用益などの所得が生じます。そうすると、資産に対する含み益課税や運用益に対する所得課税の問題などが生じます。つまり、信託がなされると課税関係が生じるので「いつ課税するのか、誰に対して課税するのか」という問題が生じます。

この点については、信託の型は信託法において様々定められており、どのような課税方法が適切なのかはそれぞれの信託ごとに異なります。そこで税法上、信託を5つの類型(①受益者等課税信託、②集団投資信託、③法人課税信託、④退職年金等信託、⑤特定公益信託等)に分類し、5つに分類した信託ごとに課税方法が定められています。

平成18年度信託法改正とそれに伴う平成19年度の税制改正

平成18年度において、84年ぶりに信託法の改正が行われました。

この信託法の改正に伴い、平成19年度税制改正において、それまでの信託に対する課税ルールが大幅に変更されました。

税制改正の骨子は「新しい信託に対する課税規定の整備」と「新しい信託を利用した租税回避行為の防止」ということになります。

信託に対する税制改正により、法人税法は信託を「①受益者等課税信託、②集団投資信託、③法人課税信託、④退職年金等信託、⑤特定公益信託等」の5つに分類し、5つに分類した信託ごとに課税方法を定めることになりました。

この中で一番大きな改正が「③法人課税信託」の創設となります。

導管理論の修正

冒頭で、信託とは「AさんがCさんに利益を与えるために、Aさんの保有する財産ををBさんに託し、Bさんがその財産を管理・運用することでその利益をCさんに与える仕組み」と説明しました。

もっと短く言うと信託とは「Aさん(委託者)の利益をCさん(受益者)に移すこと」です。イメージとしては「AさんとCさんの間に導管が通っており、その導管を伝ってAさんの利益がCさんに移転する」ということです。

このような考え方を「導管理論」といいます。そしてこの導管理論は、平成19年度の信託税制改正を境に、その考え方が大きく変わりました。

以下、税制改正前の考え方と税制改正後の考え方を説明します。

平成19年度信託税制改正前

平成19年度改正前は「利益は導管の途中で詰まることはない」という基本原則がありました。

つまり、「利益が受益者に届いているなら受益者課税を行い、受益者不存在などを理由に利益が受益者に届いていないなら、利益は導管の途中で詰まることはないから、委託者の下でまだ利益が止まっており、よって委託者に課税する」という課税方法を採用していました。

しかし、この課税方法は信託財産の所有権が受託者に移転し、委託者は支配権を有しておらず、かつ委託者の利益とならない信託利益につき、委託者課税を行うことは不合理であると批判されていました。

平成19年度信託税制改正後

平成19年度改正により、大きく変わったのは「利益は導管の途中で詰まることがある」という考え方を採用したことです。

つまり、「利益が受益者に届いているなら受益者課税を行い、受益者不存在などを理由に利益が受益者に届いていないなら、利益が導管の途中で詰まっていると考え、導管自体に課税する」と言う課税方法を採用することになりました。

この「導管自体に課税する」というのは言いかえれば「信託に対して課税する」ということです。そして「信託」というのは「委託者、受託者、受益者が存在する法律関係のこと」であり、信託自体が一つの組織体ということではありません。つまり「委託者、受託者、受益者という法律関係である信託を一括りの組織体とみなして、そのみなし組織体に法人税を課す」ということです。

このように「委託者、受託者、受益者という法律関係である信託を一括りの組織体とみなして、そのみなし組織体に法人税が課されるような信託」のことを「③法人課税信託」と言います。

しかし信託は1つの組織体ではないので、そのままでは法人税の納税義務者が存在しません。そこで信託そのものに法人税を課すという考え方を採りつつ、その納税義務者を便宜的に受託者としています。よって法人課税信託における法人税の納税義務者は受託者となります。

ちなみに、利益が受益者に届いているために、受益者課税が行われる信託のことを「①受益者等課税信託」と言います。この「①受益者等課税信託」が信託課税の原則です。

法人税の視点から見た信託の分類

先ほども述べたとおり、法人税の視点から信託を分類すると「①受益者等課税信託、②集団投資信託、③法人課税信託、④退職年金等信託、⑤特定公益信託等」の5つに分類されます。

そしてこの先は「①受益者等課税信託、②集団投資信託、③法人課税信託」を中心に説明します。

後々の学習のために、ここで①から③の信託をさらに細分化すると以下のようになります。

① 受益者等課税信託
これ以上は細分化されていません

➁ 集団投資信託(2条29号)
(a) 合同運用信託
(b) 証券投資信託
(c) 特定受益証券発行信託

➂ 法人課税信託(2条29号の2)
(a) 受益証券発行信託
(b) 受益者等が存在しない信託
(c) 法人を委託者とする一定の信託((あ)法人が事業の重要な部分を信託し、かつ当該法人の株主を受益者とするもの、(い)存続期間が20年を超える自己信託等、(う)収益の分配割合の変更が可能である自己信託等)

細かい内容についてはこの後詳しく解説するので、ここでは軽く抑えてもらえればと思います。

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