グループ法人間の寄附について

法人が他者に寄附を行った場合、原則として寄附金の損金不算入規定の適用を受けて、損金算入限度額を超える部分は損金不算入となります(37条1項)。

それでは完全支配関係のある法人間で、寄附が行われた場合はどのように取扱われるのでしょうか。

今回は完全支配関係のある法人間の寄附(グループ法人間の寄附)について見ていきます。

寄附をする側で損金不算入、寄附を受領する側で益金不算入とする

たとえばA社とB社の間には完全支配関係があり、A社はB社に現金1000万円を寄附しました。

この場合、制度上は寄附をしたA社側では当該1000万円につき、損金不算入とし(37条2項)、寄附を受領したB社側で当該1000万円につき、益金不算入とします(25条の2第1項)。

このように規定することで、グループ内の取引からは課税関係は生じておらず、完全支配関係にある法人間の寄附は単なるグループ内部の資金移動(資産を寄附したなら単なるグループ内部の資産移動)とすることができます。

つまりこのようなグループ内部の寄附は、実質的には本支店間の資金移動(または資産移動)と同じであり、本支店間で資金移動(または資産移動)があっても当然に課税関係は生じないので、同じようにグループ内部の寄附についても課税関係が生じないようにしているのです。

もしも寄付する側で損金算入、寄附を受領する側で益金算入であったなら

完全支配関係にある法人間の寄附について、寄附する側で当該寄附金を全額損金算入し、寄附を受領する側で当該寄附金を全額益金算入すれば、グループ全体として見た場合、損益が相殺されるので課税関係が生じず、このようなやり方でも目的は達成されるように思われます。

しかし制度上はこの方法を採用せず、「寄附をする側で損金不算入、寄附を受領する側で益金不算入」という方法を採用しています。その理由は「寄付する側で損金算入、寄附を受領する側で益金算入」という方法は、欠点があるからだと思われます。

たとえばA社とB社の間には完全支配関係があり、そしてA社は1億円の課税所得があり、B社には欠損金が1億円生じていたとします。そこでA社からB社に1億円の寄附を行ないました。この時、当該寄附金につきA社において1億円の損金が計上され、B社において1億円の益金が計上されるならば、それによりA社の課税所得はゼロとなり、B社も欠損金がなくなり(つまり課税所得がゼロのまま)、A社の課税所得1億円を消し去るという恣意的な所得操作による租税回避が実現してしまいます。

このような租税回避行為を防止するために「寄付する側で損金算入、寄附を受領する側で益金算入」という方法は採用されず、「寄附をする側で損金不算入、寄附を受領する側で益金不算入」という方法を採用していると思われます。

取得価額と時価が異なる資産(キャピタルゲインを含む資産)が譲渡された場合の課税の繰延

たとえばA社とB社の間には完全支配関係があり、A社は保有する甲土地(取得価額3000万円、時価8000万円)をB社に寄附しました。

A社とB社は同じグループ内部の法人同士なので、甲土地の寄附は単なるグループ内部の資産移動であり、本支店間における資産の移動と同じように、当該土地の寄附から課税関係を生じさせるべきではないと考えられます。

しかし、甲土地の寄附は寄附をしたA社から見れば「無償による資産の譲渡」にあたり、法人税法上、当該取引から収益が生じることを擬制することになります(22条2項)。A社の仕訳を表すと以下のようになります。

現金預金 8000万円/土地譲渡収入 8000万円
土地譲渡原価 3000万円/土地 3000万円
寄附金 8000万円/現金預金 8000万円

そうすると、完全支配関係のある法人同士の寄附であり、当該取引から課税関係を生じさせるべきではないにもかかわらず、A社において「土地譲渡収入8000万円ー土地譲渡原価3000万円=5000万円」の所得が生じてしまうことになります(寄附金については37条2項により、損金不算入とします)。

つまり、これは別の言い方をすれば、甲土地に含まれていたキャピタルゲインを寄附という取引のタイミングで実現させていると言えます。

そこで、当該キャピタルゲインを寄附という取引のタイミングで実現させず、課税の繰延を行うための規定として法人税法61条の11があります。当該規定を用いて、課税の繰延を行うことにより、甲土地の寄附を単なるグループ内部の資産移動とすることができます。

A社の仕訳を表すと以下のようになります。

寄附金 3000万円/土地 3000万円

このようにすれば、後は当該寄附金3000万円を37条2項により損金不算入としてやればいいだけとなります。

このように完全支配関係にある法人同士で資産の譲渡を行ったときに、当該資産に含まれるキャピタルゲインの課税を繰り延べますが、このような資産の譲渡を原因としてキャピタルゲイン課税の繰延が行われた資産のことを「譲渡損益調整資産」と言います。

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