「分配」に関するその他の論点

「分配」に関する話は「分配」の概要現物配当みなし配当清算する法人に対する課税で行ってきました。

今回はこれらの話以外の「分配」に係るいくつかの論点を解説したいと思います。

適格現物出資と適格現物分配

現物出資は「株主から法人への金銭等の移転」であり、現物分配は現物出資とは反対方向の「法人から株主への金銭等の移転」です。

平成22年度改正前は現物出資については、一定の要件を満たせば「適格現物出資」となり、現物に含まれる含み損益への課税の繰延が認められますが、現物分配の場合は「適格現物分配」という制度は存在せず、現物に含まれる含み損益への課税が必ず行われることになっていました。

したがって、たとえば新しい法人を作ってその法人に現物出資を行う場合は、現物に含まれる含み損益への課税の繰延があり得ますが、反対に法人を解散する場合には、残余財産に含まれる含み損益への課税は必ず行われるということになっていました。

しかし平成22年度改正により「適格現物分配」の制度が創設されることで、現物分配の場合でも完全支配関係にある法人間の現物分配であれば、含み損益に対する課税の繰延が認められるようになりました。

なお「現物分配」の場合、それが「利益剰余金からの配当」であれば、当該現物配当を受ける法人株主は配当課税を受けることになります(23条)。そして「現物分配」が「利益剰余金の配当以外の分配」であるなら、当該現物分配を受ける法人株主はみなし配当課税を受けることになります(24条)。さらにみなし配当課税を受けるような「現物分配」が適格現物分配となる場合は、みなし配当となる部分は分配を受ける法人側で益金不算入とされます(62条の5第4項)。つまり「適格現物分配」に該当すれば、分配を行う側と分配を受ける側双方で現物分配の段階での課税はありません。

しかし適格現物出資と適格現物分配は完全に反対の行為として同じようなルールが適用される訳ではありません。株式の保有割合が50%超100%未満である法人間で行われる現物出資は「適格現物出資」となり得ますが、現物分配の場合は完全支配関係が要求されるため、株式の保有割合が100%の場合のみ「適格現物分配」となり得るのです。

また現物出資も現物分配も「適格」となるのは法人株主の場合のみであり、個人株主であるならその時点で「適格」にはなり得ません。

その他資本剰余金からの配当とその他利益剰余金からの配当の選択

法人税法上、その他資本剰余金からの配当は「原資と利益」が混合した状態で配当がなされたものとみなされます。よって「分配額から対応資本金等の額(原資)を差し引いたみなし配当の金額」につき、株主側で配当課税されることになります(法人税法24条、所得税法25条)。

これに対して法人税法上、その他利益剰余金からの配当は「利益」のみから配当がなされたとみなされます。よって当該配当を受けた株主側でその配当額の全額につき配当課税を受けます(法人税法23条、所得税法24条)。

なお会社法上、その他資本剰余金から配当を行うか、その他利益剰余金からの配当を行うかは、法人が自由に選択できます。

そうであるなら、たとえば株主に1000万円の配当を行おうとした場合、その他利益剰余金から1000万円の配当を行うと、配当を受ける株主側において1000万円全額につき配当課税されることになります。これに対してその他資本剰余金から1000万円の配当を行うと、1000万円全額につき配当課税を受けることはなく、1000万円から対応資本金等の額(原資)を差し引いた額(みなし配当額)につき、配当課税を受けることになります(たとえば対応資本金等の額が800万円なら、1000万円から800万円を差し引いた200万円につきみなし配当課税を受けることになります)。よって株主に対する課税を考えるとその他資本剰余金からの配当の方が租税負担が少なく「その他利益剰余金からの配当をやめて、その他資本剰余金からの配当行う」ことにより租税回避が実現してしまいます。

このような問題は以下のような比例的配分において顕著に表れます。

たとえば法人の株主が全部で10人で、それぞれの持分は均等で当該株式は全て議決権株式であったとします。そして各株主はそれぞれその他資本剰余金から250万円の配当を受け、そのうち50万円についてみなし配当課税を受けたとします。しかし配当後も各株主は引き続き法人の10%株主として法人財産に対する持分を有し、配当前と同様の議決権を行使できます。つまり相対的持分の減少がないのです。当該その他資本剰余金からの配当は、実質的にその他利益剰余金からの配当と変わる所はありません。したがって本来なら株主は250万円につき配当課税を受けるところを50万円の配当課税を受けるのみで済んでしまうという歪みが生じているのです。

アメリカ法においてはこのような比例的払戻しは否認の対象とされる典型的な租税回避行為となります。

また同じような問題は自己株式の取得の場面でも生じます。

たとえばA社の発行済株式の総数は100株であり、その全てをaが保有していました。そしてA社は株主aからそのうちの20株を100万円を交付して取得したとします(自己株式の取得)。そして株主aが交付を受けた100万円のうち20万円がみなし配当の金額でした。そうすると株主aは20万円につき配当課税を受けることになります。しかし、自己株式の取得後も株主aはA社の100%株主であり、自己株式取得前となんら変わることはありません。よって当該自己株式の取得による100万円の分配は、その他利益剰余金からの配当と経済的に変わる所はありません。にもかかわらず、自己株式の取得の形式を取ることで株主に対する100万円の配当課税を20万円の配当課税にすることができてしまっているのです。

自己株式の資産性

自己株式を取得した法人側では当該自己株式について2つの取扱いが考えられます。一つは取得した自己株式を資産として計上することであり、もう一つは資本の払戻しとすることです。

この点、法人税法上は自己株式の取得を資本の払戻しとして取り扱い、自己株式を取得した法人側で資本金等の額(原資)と利益積立金額(利益)を減額させます。

つまり法人税法上は自己株式の資産性を否定しており、当該減額処理により自己株式の取得価額はゼロとなります。その結果、法人が自己株式を譲渡する行為は新株発行と等しく扱われることになります。つまり自己株式の譲渡による株主から法人への金銭等の移転は法人の資本金等の額の増加を生じる取引となり、資本等取引(22条5項)として益金に算入されません(22条2項)。

その他資本剰余金とその他利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当

その他資本剰余金とその他利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当(混合配当)が行われた場合、混合配当の全体が24条1項4号に規定する資本の払戻し(その他剰余金の配当)に該当するのか否かが問題となります。

この点、東京高判令和元年5月29日訴月68巻4号343頁(国際興業管理事件)はその他資本剰余金を原資とする配当には24条1項4号(当時は3号)が、利益剰余金を原資とする配当には23条1項1号がそれぞれ適用されると判断しました。

これに対して上告審である最判令和3年3月11日民集75巻3号418頁は、上記高裁の判断を是認せず、混合配当の全体が24条1項1号に規定する資本の払戻しに該当すると判断しました。

これはその他利益剰余金のみを原資とする配当は、法人税法上「利益」のみからの配当であるとみなして23条1項の適用を受け、その他資本剰余金を原資とする配当は「原資と利益」が混合した配当であるとみなして、いわゆる「プロラタ計算」を採用したものであるから、その他資本剰余金とその他利益剰余金からの混合配当の場合でも「原資と利益」の混合配当として、当該「プロラタ計算」を行うべきであると最高裁は考えているためです。

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