公益法人等(別表第二に掲げる一般社団法人および一般財団法人を除く)がその収益事業に属する資産のうちから、その収益事業以外(非収益事業)のために支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなされます(法人税法37条5項、施行令77条の3)。
公益法人等は、収益事業と非収益事業の両方を行う場合があります。なお、収益事業には法人税が課されますが、非収益事業には法人税は課されません。
そして収益事業から非収益事業に事業資金を移すときに、当該資金移動につき、収益事業側において寄附金とみなして、その資金移動の一部の損金算入を認めているわけです。
単なる一つの公益法人等の内部での資金移動であるにすぎないのに、なぜその資金移動につき損金算入を認めて税制上優遇いるのでしょうか。
今回は公益法人等の収益事業から非収益事業への資金移動につき、寄附金とみなされる理由を解説します。
みなし寄附金の制度の適用が認められる公益法人等
法人税法上、法人は「公共法人、公益法人等、人格のない社団等、協同組合等、普通法人」の5つに分類されます。
このうち「公益法人等」とは別表第2に規定される法人のことであり、以下の3つに分類されます。
法人税法上の公益法人等
1⃣ 公益社団法人・公益財団法人
2⃣ 非営利型の一般社団法人・一般財団法人
3⃣ 上記1⃣2⃣以外の公益法人等
このうち1⃣と3⃣の法人につき、みなし寄附金の制度が適用されますが、2⃣の法人はみなし寄附金の適用対象から明文で除外されています(37条4項)。
法人税法上の公益法人等の詳細は公益法人課税で説明しています。
公益法人等の目的
1⃣と3⃣の公益法人等には「広く社会一般の利益になる活動を行う法人」が多く含まれます。
つまり、これらの公益法人等の目的は「広く社会一般の利益になる活動を行うこと」であり、その活動は収益の獲得を目的としない非収益的なものです。よってこれらの公益法人等の目的は「広く社会一般に利益となる活動である非収益事業を行うこと」であると言えます。
公益法人等が収益事業を行う理由
上記のように1⃣と3⃣の公益法人等は、非収益事業を行うことが本来の目的であり、収益事業を行うのは、収益事業でお金を稼いで、その資金を非収益事業の資金とするためです。
収益事業から非収益事業への資金の移動につき、寄附金とみなして税制上優遇している理由
1⃣や3⃣の公益法人等が収益事業で稼いだ資金を、非収益事業の資金とするために支出する場合、当該収益事業の非収益事業への支出は、収益事業側において寄附金とみなされます(37条5項、施行令77条の3)。
よって収益事業側において、当該支出につき、一般寄附金として寄附金の損金算入限度額の範囲内で損金算入が認められます(37条1項)。
当該支出は公益法人等の内部での資金移動にすぎません。しかし、そのような内部の資金移動にすぎないものについて、なぜ寄附金とみなして税制上優遇しているのでしょうか。
それは「収益事業で稼いだお金を、非収益事業に投資をして、公益法人等の本来の目的である非収益事業を積極的に行わせるため」です。
もしも収益事業で稼いだお金を非収益事業に移すときに、寄附金とみなされず、収益事業側で損金算入できないなら、資金を移しても節税効果はなく、公益法人等が積極的に収益事業で稼いだお金を非収益事業に移すことは期待できません。そうすると、公益法人等の本来の目的は「非収益事業を行うこと」であり、そもそも収益事業を行うのは非収益事業の資金を稼ぐためであるにもかかわらず、収益事業で稼いだお金が非収益事業に回らず、公益法人等の本来の目的を逸脱して収益事業の方に力が注がれ、非収益事業が疎かになりかねません。
そこで、「収益事業で稼いだお金を非収益事業に移す場合、当該資金移動を収益事業側において寄附金とみなして損金算入できる」となればどうでしょうか。公益法人等を経営しているのは生身の人であり、できるだけ節税したいと思うはずです。そのようなときに「収益事業で稼いだお金を非収益事業に移せば節税できる」となれば、積極的に非収益事業にお金を移転させることが期待できます。
このように、収益事業で得た資金を非収益事業へ移転する場合には、その資金移動を寄附金とみなして損金算入できる仕組みを制度上整えることで、収益事業から非収益事業への資金の流れが円滑になり、公益法人等の本来の目的である社会的利益の実現を果たすことが期待できるのです。

