法人税法37条(寄附金)と22条2項(無償による資産の譲渡)との関係性について

法人税法上、益金の額に算入すべき収益の額は、別段の定めがあるものを除き、以下の取引から生じることになります(22条2項)。

・「有償による資産の譲渡」
・「有償による役務の提供」
・「無償による資産の譲渡
・「無償による役務の提供」
・「無償による資産の譲受け」

の5つです。また保険として

・「その他の取引」

からも益金が生じると規定しています。


益金はいつ生じるのか――法人税法22条2項が定める益金発生の5形態参照

このうち今回取り上げるのが「無償による資産の譲渡」です。

つまり「無償による資産の譲渡」から益金の額に算入すべき収益の額が発生すると22条2項において規定している訳です。

今回は22条2項の「無償による資産の譲渡」と37条の寄附金の関係性について解説します。

22条2項において「無償による資産の譲渡」から収益が生じると規定している理由

たとえば、A社は取得価額3000万円、時価8000万円の土地をB社に贈与しました。

A社の会計上の仕訳は次のとおりです。

寄附金 3000万円/土地 3000万円

つまり、会計上は当該贈与から収益は生じません。

しかし当該取引はA社にとって「無償による資産の譲渡」となるために、法人税法上は収益が生じることになります(22条2項)。よって税法上の仕訳は次のとおりとなります。

現金預金 8000万円/土地譲渡収入 8000万円
土地譲渡原価 3000万円/土地 3000万円
寄附金 8000万円/現金預金 8000万円

つまり、①当該土地を通常の有償取引により時価8000万円で売却した後、②売却代金8000万円をB社に贈与した、と考える訳です

このように本来は「無償による資産の譲渡」から収益が生じないのに、収益が生じることを擬制しているのが22条2項の規定ということになります。

それではなぜ、法人税法はわざわざ22条2項において「無償による資産の譲渡」から収益が生じることを擬制しているのでしょうか。

それは「当該無償取引と同じ取引を有償で行った者との間の課税の公平を維持し、同時に法人間の競争中立性を確保するため」です。

先ほどの「A社は取得価額3000万円、時価8000万円の土地をB社に譲渡した」事例で説明します。

当該譲渡が有償譲渡である場合、

現金預金 8000万円/土地譲渡収入 8000万円
土地譲渡原価 3000万円/土地 3000万円

となり、収益8000万円と原価3000万円の差額5000万円が所得となるため、当該5000万円につき法人税が課税されます。

他方、当該譲渡が無償譲渡であり、かつ当該取引から収益を認識しなければ、

寄附金 3000万円/土地 3000万円

となり、無償譲渡からは収益が計上されず、よって当然に所得も生じないので、法人税は課されないことになります。

しかし、土地の無償譲渡も何の意味もなく行われているのではなく、法人にとって何らかの経済的な意味があって無償譲渡しているはずであり、有償譲渡と同じように経済的合理性に基づいて無償譲渡を行なっているはずであり、そうであるなら有償譲渡を行った者と無償譲渡を行った者には同様の課税がなされるべきであり、にもかかわらず両者の課税が異なるということは課税の公平等が図られていないことになります。

そこで、22条2項は有償譲渡と無償譲渡の課税の不公平等を是正するために、無償譲渡からも収益が生じることを擬制しているのです。

結果として、上記の有償譲渡からも無償譲渡からも土地を譲渡することによる所得5000万円が生じるため、両者の課税の不公平等が是正されるのです。

法人税法37条(寄附金)と22条2項(無償による資産の譲渡)との関係性について

先ほどの「A社は取得価額3000万円、時価8000万円の土地をB社に譲渡した」という事例について、有償譲渡の場合と無償譲渡の場合をもう一度ここで並べて比較してみます。

当該譲渡が有償譲渡である場合

現金預金 8000万円/土地譲渡収入 8000万円
土地譲渡原価 3000万円/土地 3000万円
当該取引が無償譲渡である場合

現金預金 8000万円/土地譲渡収入 8000万円
土地譲渡原価 3000万円/土地 3000万円
寄附金 8000万円/現金預金 8000万円

両者の取引から「土地譲渡収入8000万円ー土地譲渡原価3000万円=5000万円」の所得が生じています。

そして有償譲渡なら、当該所得5000万円に対して法人税が課税されます。

これに対して無償譲渡の場合の「寄附金8000万円」の全額に対して損金算入が認められるとしたらどうでしょうか。この場合、所得5000万円が生じている一方で損金8000万円が生じているため、課税所得はトータルで△3000万円となります。そうすると無償譲渡を行なえば、所得5000万円を消すこともできるし、△3000万円につき法人所得をさらに消すことが可能です。

つまり、無償取引における寄附金の全額につき損金算入を許せば、有償譲渡と無償譲渡の課税の公平等は図れなくなるのです。

そうすると、どうすれば有償譲渡と無償譲渡の課税の公平等が図られるのでしょうか。それは当該寄附金の全額の損金算入を制限してしまうことです。そうすることで、有償譲渡からも無償譲渡からも所得5000万円が生じることになるので両者課税の公平等を図ることができます。

しかし当該「寄附金」には費用性があると考えられます。つまり、当該土地の無償譲渡は何の考えもなしに行ったのではなく、将来的な見返りを期待して行ったものと思われます。

そして「寄附金」は「費用性がある部分」と「費用性がない部分」が混在していると考えられます(大阪高判昭和35年12月6日行集11巻12号3298頁)。

よって「寄附金」のうち「費用性がある部分」を損金算入し、「費用性がない部分」の損金算入を制限すべきです。そこで「寄附金の損金算入限度額についての規定(37条1項)」を設け、寄附金につき当該損金算入限度額の範囲内で損金算入をさせているのです。

つまり22条2項の無償譲渡への課税と有償譲渡への課税の公平等を支えているのは「寄附金につきその損金算入を制限するという37条の思想」であると言えるかもしれません。

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