中小法人に関する資本金基準

法人税法上、法人は「公共法人、公益法人等、人格のない社団等、協同組合等、普通法人」の5つに分類されます。

このうち「普通法人」は、資本金の額が1億円以下であるか1億円超かによって「中小法人」と「中小法人以外の普通法人」に分類されます。

そして資本金1億円以下の「中小法人」は様々な税制上の優遇措置が用意されています。

しかし、税制上、優遇措置を受けることができるか否の判定基準として「資本金1億円」は時代遅れになっている感があります。なぜなら、法人は資本金の額を1億円以下に調整することで比較的容易に税制上の優遇措置を受けることができてしまうからです。

今回はこの「1億円の判断基準」と税制上の優遇措置について解説したいと思います。

中小法人が受けることのできる様々な税制上の優遇措置

資本金の額が1億円以下で「中小法人」と判定された普通法人は、様々な税制上の優遇措置を受けることができます。

以下、受けることのできる優遇措置を列挙していきます。

軽減税率・・・資本金1億円以下の中小法人は、年間の所得が800万円以下の部分には23,2%の法人税率に代えて19%の軽減税率が適用される(法人税法66条2項)。さらに租税特別措置法により時限的に19%から15%に軽減されている(租税特別措置法42条の3の2第1項)。

留保金課税の適用除外・・・特定同族会社と判定されて留保金課税がなされるためには「資本金の額が1億円超」という要件を満たす必要があるため、「資本金の額が1億円以下」の中小法人は特定同族会社に該当せず、留保金課税は適用されない(法人税法67条1項)。

交際費等の損金不算入制度における定額控除制度・・・資本金1億円以下で中小法人と判定された場合、交際費等の損金算入限度額が緩和されて基本的に年800万円までの交際費を損金算入できるという優遇措置が設けられている(租税特別措置法61条の4第2項)。

繰越欠損金の損金算入限度額の緩和・・・資本金1億円以下で中小法人と判定された場合、繰越欠損金の損金算入限度額が緩和されている(法人税法57条11項1号)。

貸倒引当金繰入額の損金算入・・・資本金の額が1億円を超える法人は貸倒引当金繰入額を損金算入できないが、資本金の額が1億円以下の中小法人は貸倒引当金繰入額を繰入限度額の範囲内で損金算入できる(法人税法52条1項、2項、租税特別措置法57条の9第1項)。

中小法人に税制上の優遇措置を設ける理由と大企業の子会社の適用除外

中小法人は、一般的に事業規模が小さく、資金調達能力も脆弱であるので、政策的な配慮により上記のような税制上の優遇措置を設けています。

したがって、たとえ資本金の額が1億円以下の法人であっても、大企業(資本金の額が5億円以上の会社)の100%子会社であるなら、そのような法人に税制上の配慮を行う必要がないため、平成22年度の改正により、当該100%子会社に対する上記の税制優遇が撤廃されました。

中小法人の判定基準等を逆手に取った租税回避行為とそれに対する対応策

中小法人の判定基準等を逆手に取った租税回避行為

上記で見たように、資本金の額が1億円以下であると、原則的に中小法人の税制上の優遇措置を受けることができます。

しかし、たとえ資本金の額が1億円以下であっても大企業(資本金の額が5億円以上の会社)の100%子会社なら、例外的に中小法人の税制上の優遇措置を受けることができません。

そうであるなら、現時点では中小企業向けの税制優遇を受けられない企業であっても、資本金の額を引き下げることで、その適用を受けられるようにすればよい、という発想が生まれます。

具体的には2つ考えられます。1つは「100%子会社を有する資本金5億円以上の大会社の資本金を5億円未満にすること」です。資本金5億円以上の大会社の100%子会社は中小法人の税制上の優遇措置を受けることはできませんが、資本金5億円未満の会社の100%子会社は中小法人の税制上の優遇措置を受けることができるからです。

もう1つは「資本金の額が1億円超の会社であるなら、その資本金を1億円以下にすることで中小法人の税制上の特例を受けられるようにすること」です。

実際にこれを実行した会社があります。たとえば平成27年9月1日付で、吉本興業は資本金を125億円から1億円に減資しました。その他にもレオパレス21、スカイマーク、毎日新聞社、日本旅行などが資本金を1億円にする減資を行っています。

当該租税回避行為に対する対応策

上記のような租税回避行為に対して、平成29年度改正で、中小法人の税制上の優遇措置を受けるためには「平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)が年15億円以下であること」という要件が加えられました(租税特別措置法42条の4第19項8号)。

これにより、財務状況が脆弱とは言い難い会社が中小法人の税制上の優遇措置を受けるという事態を防止しようとした訳です。

しかし実際には、中小法人としての税制上の優遇措置が受けられなくなるのは、租税特別措置法に規定されている部分であり、法人税法本法に規定されている中小法人向けの税制優遇措置については、引き続き適用を受けることができます。

資本金基準に代わる判断基準

中小法人の税制上の優遇措置を受けることができるか否かは、基本的には資本金を基準に判定されることになります。

しかし、資本金基準は上記のように税制上の恩恵を受けるべきでない者が受けることができてしまうということが起こり得ます。

よってこれからは資本金基準以外の基準も模索していく必要があります。

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