前期損益修正と法人税法22条4項の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」

今回の話は、少しマニアックな話になるのかもしれません。

今回の話は、法人税法22条4項に規定する「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の解釈の記事を読まなければ理解しづらいと思うので、合わせてお読みください。

過年度原価計上漏事件(東京地判平成27年9月25日税資265号順号12725)

この事件では、過年度分の外注費(売上原価)について、本来計上すべき事業年度において損金経理をし忘れました。そこでこの計上漏れがあることを知った事業年度に前期損益修正損として損金算入できるか否かが争われました。

まずはこの「前期損益修正」について、「前期損益修正は企業会計原則に明記された会計処理方法であり、過去の財務諸表を遡って修正処理することになれば、利害調整の基盤が揺らぐことになるという企業会計固有の問題に基づくもの」と説明しています。つまり「前期損益修正を計上することは、過去の財務諸表を遡って修正することなく、当該財務諸表を利用する利害関係者の判断を混乱させないようにするための、企業会計上必要な会計処理である」ということです。

そして「ある事業年度に損金として算入すべきであったのにそれを失念し、それをその後の事業年度に発見したという単なる計上漏れのような場合において、企業会計上行われている前期損益修正の処理を法人税法上も是認し、後の事業年度で計上することを認めると、本来計上すべきであった事業年度で計上することができるほか、計上漏れを発見した事業年度においても計上することが可能となり、同一の費用や損失を複数の事業年度において計上することができることになる。こうした事態は、恣意の介在する余地が生じることになり、事実に即して合理的に計算されているともいえず、公平な所得計算を行うべきであるという法人税法上の要請に反するものと言わざるを得ないのであって、法人税法がそのような事態を容認しているとは解されない」と述べています。

つまり、過年度の外注費(売上原価)の計上漏れについて、前期損益修正損として計上することは企業会計には適合するけれども、前期損益修正損を法人所得の計算に含めてしまうと、公平な所得計算という法人税法の目的を達成できなくなるので、前期損益修正損という会計処理は租税法会計には適合せず、法人税法22条4項の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」としては認められない、ということになります。

TFK事件(東京地判平成25年10月30日判時2223号3頁、控訴審:東京高判平成26年4月23日訴月60巻12号2655頁)

この事件では、会社更生法の適用を受けた法人(旧武富士)が、過年度に受領した制限超過利息等を課税所得に含めて法人税を納付していたところ、後に当該利息が受領すべきでないものであったことが判明しました。そこで当該過年度に係る法人税額について減額を求める更正の請求を行いましたが、その適法性が争われました。

この判決において、更正の請求は認められませんでしたが、当該過年度の受取りすぎた利息を前期損益修正損として計上すれば、当該処理は法人税法22条4項の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に該当する、と判断されました。

つまり、「更正の請求による法人税の減額はできないけど、前期損益修正損を用いて法人税を減額することは認める」ということです。

過年度原価計上漏事件とTFK事件の比較

前期損益修正と更正の請求

過年度原価計上漏事件は、過年度に外注費(売上原価)の計上漏れがありました。そして、その計上漏れによる法人の損失(法人税を多めに納めてしまっている)を取り戻す方法として2つ考えられます。一つは、計上漏れに気付いた年度において前期損益修正損を計上すること、もう一つは計上漏れに気付いた時点で法人税額の減額を求める更正の請求をすることです。

他方、TFK事件では、過年度に本来受け取るべきでない利息を受け取り、それを課税所得に含めた結果、その年度に法人税を多く納めていました。この法人の損失(法人税を多めに納めてしまっている)を取り戻す方法として2つ考えられます。一つは法人税を多く納めすぎたことに気付いた年度において前期損益修正損を計上すること、もう一つは法人税を多く納めすぎていたことに気付いた時点で法人税額の減額を求める更正の請求をすることです。

このように、両事件はいずれも法人税を過大に納付していた点で共通しており、また、その過大納付された法人税を取り戻す手段として、前期損益修正損を計上する方法と、更正の請求を行う方法が考えられる点でも共通しています。

過年度原価計上漏事件とTFK事件の違い

上記のように両事件を紐解くと、非常に良く似ていることが分かります。しかし、両事件において決定的に違う点があります。

それは、過年度原価計上漏事件では、外注費の計上時点において、注意を払えば当該外注費を計上すべきことを「分かりえた」のに対し、TFK事件では、利息を計上した当時において、本来計上すべきでない利息であることを「分かりえなかった」という点です。

両事件の違いと「前期損益修正、更正の請求」

このように両事件の決定的な違いにより、両事件で法人税の納めすぎを取り戻す方法が異なってきます。

まずは「過年度原価計上漏事件」です。この事件の場合は前期損益修正損を計上して、納めすぎた法人税を取り戻すことはできません。なぜなら、これを認めてしまうと、当該外注費につきその帰属年度を納税者が恣意的に選択できてしまい、公平な所得計算という目的を達成できないからです。よってこの事件においては、更正の請求により、納めすぎた税金を取り戻すことになります。

続いて「TFK事件」です。この事件の場合は前期損益修正損を計上して、納めすぎた法人税を取り戻すことになります。なぜなら、過年度における利息の受領は、その受領時点で過大に受け取っていることは「分かりえず」、それが判明した(即ち損失が確定した)事業年度において前期損益修正損として損金になると考えられるからです。そして、前記損益修正損の計上が認められる以上、更正の請求を認める必要はありません。

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