決算調整事項と申告調整事項

法人税の世界においてはこのような言葉が登場します。

これらの言葉はいったい何を表しているのかを解説したいと思います。

法人税申告書作成までの流れ

まずは、法人税申告書作成までの流れを説明します。

法人は期中取引について会計帳簿に記帳していきます。そして決算において決算整理仕訳を行い、決算整理後残高試算表をもとに決算書を作成します。

そして当該決算書につき、株主総会の承認(会社法438条2項)を受けることで決算書が確定します(法人税法74条1項、確定決算主義)。

そしてこの「確定した決算書」をもとに法人税の計算を行い、法人税申告書を作成します。

これが法人税申告書作成までの一連の流れです。

確定決算主義

法人が作成した決算書につき、株主総会の承認(会社法438条2項)を受けることで決算書が確定することを「確定決算主義」と言います(法人税法74条1項)。

そして当該確定した決算書に基づいて法人所得の計算を行う訳です。

このことを国と法人の会話形式で説明すると、

法人「我々は、法人所得の計算の基礎となる決算書を頑張って作成し、この決算書が法人所得を計算するための正しい決算書であると信じて株主総会の承認を受けました。だからこの申告書を法人所得を計算する基礎となる決算書と認めて下さい」
国「分かりました、あなたの意思(法人の意思)を尊重し、その決算書を法人所得を計算するための基礎となる決算書と認めてあげましょう」

という感じです。

しかし、ここで国が法人に制約を課すことになります。どのような制約かというと、

国「あなたの意思(法人の意思)を尊重し、当該決算書を法人所得を計算するための基礎となる決算書と認めてあげます。よって当該決算書に基づき法人所得を計算してください。ただし、当該決算書に基づかない法人所得の計算は認めません」

という制約です。

たとえば当該決算書に「減価償却費100」という費用計上をすることを忘れた場合、法人所得の計算において「減価償却費100」を損金算入できません。当該決算書に「減価償却費100」という費用計上をしていないのに、法人所得の計算上「減価償却費100」を計上することは「当該決算書に基づかない法人所得の計算」となるので認められないということです。

そして当該決算書にはあらゆる費用が計上されていますが、このように決算書に費用として計上することを「損金経理」と言います。

損金経理

続いて「損金経理」の説明です。「損金経理」は法人税法2条25号で定義がなされています。

法人税法2条25号(損金経理)

法人がその確定した決算において費用又は損失として経理することをいう。

別の言い方をすると、損金経理とは「決算書が株主総会の承認を受けて確定する前までの期中や決算整理のタイミングで、会計上費用として計上すること」です。

このように損金経理するタイミングは、決算書が株主総会の承認を受けて確定する前までなので、決算が確定した後は損金経理できません。

決算調整事項

決算調整事項とは、損金経理される費用のうち、法人税法で「損金経理をしなければ、損金算入は認めない」と規定しているものをいいます。

つまり、原則全ての費用は損金経理をしなければ、損金算入が認められませんが、このうち、特に法人税法で「損金経理をしなければ、損金算入は認められない」と規定している費用が「決算調整事項」です。

この「決算調整事項」は決算が確定する前までに、損金経理をしなければ、決算確定後の調整、すなわち「申告調整」は認められず、損金算入が認められません。

「決算調整事項」≒「決算整理仕訳」というイメージで捉えてもいいのかもしれません。「決算調整事項」には以下のようなものがあります。

・減価償却資産および繰延資産の償却費
・一括償却資産の償却費
・少額減価償却資産および少額の繰延資産
・引当金および準備金積立額
・使用人兼務役員の使用人分賞与

など

申告調整事項

申告調整事項

法人所得の計算は、原則として「確定した決算書」に基づいて行います。言い換えれば、「確定した決算書」に基づかない法人所得の計算は原則認められません。

しかし、現実には「確定した決算書」に一定の修正(調整)を加えて法人所得の計算を行います。このように例外的に確定した決算書に修正(調整)を加える項目を「申告調整事項」と言います。

具体的には、法人税申告書作成の段階で、確定した決算書の利益に「加算・減算」調整して法人所得を計算します。この「加算・減算」調整は法人税申告書別表四において行われます。

つまり「申告調整事項」とは別表四における「加算・減算」調整項目のことです。

この「申告調整事項」は「任意的調整事項」と「必須的調整事項」に分類されます。

任意的調整事項

「任意的調整事項」とは、確定した決算における会計処理とは関係なく、法人が選択により申告書において調整を行った場合にのみ認められる加算・減算調整項目です。

たとえば、法人が配当金を受け取ったとき、会計上は「受取配当金」として収益計上しますが、法人所得を計算する上で「当該受取配当金の全部または一部を益金に算入しない」ことが認められています(法人税法23条7項:受取配当等の益金不算入)。

そうであるなら、会計上収益として計上した「受取配当金」を法人所得を計算する上で減額調整した方が、課税所得が小さくなり、法人税の納税額を減少させることができます。

しかし減額調整するか否かはあくまで「任意」であるため、当該受取配当金の減額調整を申告書上行わなければ、法人所得を減額することができず、法人税の納税額を減らすこともできません。

したがって調整を行ったほうが法人にとって有利である「任意的調整事項」は忘れずに行う必要があります。

任意的調整事項の具体例

受取配当等の益金不算入(法人税法23条7項)、外国子会社から受ける配当等の益金不算入(法人税法23条の2第5項)、所得税額の控除(法人税法68条4項)、外国税額控除(69条25項)等

必須的調整事項

「必須的調整事項」とは、法人の意思に関わらず求められる調整であり、決算確定後、申告書作成の段階で当然行わなければならない調整事項です。

したがって、仮に法人が「必須的調整事項」につき申告調整していなくても、課税庁による減額更正や増額更正等の対象となり、強制的に調整されることになります。

必須的調整事項の具体例

資産の評価益の益金不算入(法人税法25条)、還付金等の益金不算入(26条)、資産の評価損の損金不算入(36条)、資産の評価損の損金不算入(33条)、役員給与の損金不算入(34条)、寄付金の損金不算入(37条)、法人税額の損金不算入(38条)など

申告書に示された法人の意思の修正

上記で説明した①決算調整事項、②任意的調整事項、③必須的調整事項を「法人の意思」という視点から見ると、以下のように説明できます。

①決算調整事項は「確定した決算において計上した費用は、法人所得を計算する上での基礎となる金額である」という法人の意思です。②任意的調整事項は「申告書作成の段階で、確定した決算の金額を修正して法人所得を計算する」という法人の意思です。

この①と②の法人の意思は、法人税申告書の提出を通じて尊重されます。この法人の意思は同時に法人を制約します。つまり法人が示した意思を後日修正することに制約が加わるということです。

それでは法人税申告書の提出により示した法人の意思である①決算調整事項、②任意的調整事項は申告書の提出後に修正できないのでしょうか。

この点につき②任意的調整事項にかかる法人の意思は、申告書の提出後「更正の請求」を行うことによって修正できるという判例があります(最判平成21年7月10日民集63巻6号1002頁、南九州コカ・コーラボトリング株式会社事件)。

この「更正の請求」による法人の意思の修正が認められる理由は「もともと②の任意的調整事項によって法人が受けられるはずだった納税額の減額という利益を、計算ミスで受けられなかった分を受けられるようにするための修正であり、法人が受ける利益の範囲を新たに広げるものではないから」です。

他方③の必須的調整事項は、法人の意思とは無関係に課税上の取扱いが決まるものであるため、これは法人の意思ではありません。もしも③必須的調整事項の金額が申告時に間違っていたなら、後日課税庁の減額更正や増額更正等により修正されることになります。

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