内国法人は各事業年度終了の日の翌日から2月以内に、税務署長に対して「確定した決算」に基づいて法人税申告書を提出しなければならないとされています(法人税法74条1項)。
これを「確定決算主義」と呼びます。
そして「確定した決算」とは一般には株主総会の承認(会社法438条2項)を受けた決算書を言います。
噛み砕いて言うと、「株主総会の承認を受けた決算書に基づいて、法人税申告書を作成すべき」と規定しているのが法人税法74条1項(確定決算主義)です。
今回はこの「確定決算主義」について詳しく解説します。
確定決算主義は手続的なルールである
確定決算主義は「法人税申告書の作成の元になる決算書は株主総会の承認を受けたものでなければならない」とするものです。
つまり、決算書につき、手続的に株主総会の承認を要求しているだけなのです。
何が言いたいかというと、決算書につき株主総会の承認を受けたとしても、その決算書の内容が真に正しい決算書に生まれ変わる訳でなないということです。株主総会の承認を受ける前後の決算書の数値は全く同じです。
よって決算書につき、株主総会の承認を受けたとしても、その決算書が課税所得を計算する上で正しい金額であるという保証を与えるものではないのです。
このように「決算書につき、株主総会の承認(会社法438条2項)を受けなければならない」という手続規定を法人税法74条1項で定めている訳です。
これに対して、法人税法22条4項は、法人税の所得計算、すなわち益金および損金の計算は、「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って行うべきことを定めています。
ここでいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」とは、企業会計原則や、会社法に基づく会社計算規則などを指すものと解されています。
この点において、法人税法22条4項は、法人の所得計算の方法そのものを規律する規定であり、確定決算主義を定める法人税法74条1項とは異なり、所得計算の実体的なルールを定めた規定であると言えます。
確定決算主義(法人税法74条1項)は「法人の意思」を尊重する規定
法人税法74条1項は「法人が作成した決算書につき、株主総会の承認さえ受ければ、その決算書を法人の所得計算の基礎となる決算書に格上げしてあげますよ」と言っています。
つまり、法人が独自に作成した決算書(金額的に間違っているかもしれない決算書)を尊重し、その決算書を法人所得を計算するための基礎となる決算書として認めているのです。
これを法人と国の対話形式で説明すると以下のようになります。
法人「我が法人は法人所得を計算する上で、ex企業会計原則に従って収益・費用を計上し、決算書を作成しました。確かにこの決算書が法人所得を計算する上で100%正しいものではないかもしれません。しかし我が法人は法人所得を計算するための基礎となる正しい決算書を作成したつもりです。よって当該決算書につき、株主総会の承認を受けました。」
国「承知しました。あなたの意思(法人の意思)を尊重して、当該決算書を法人所得を計算するための基礎となる決算書であることを認めます。」
確定決算主義(法人税法74条1項)は当該法人を拘束するという側面もある
国が法人の意思を尊重して、株主総会の承認を受けた決算書を、法人所得を計算するための基礎となる決算書であることを認めるということは、逆に言えば「決算書で示した内容に基づかない課税所得の計算は制限される」ということです。
法人所得の計算は、確定した決算書の内容に基づいて行われなければならず、そのような意味合いで、法人を拘束するのです。
損金経理と確定決算主義
損金経理とは「法人がその確定した決算において費用又は損失として経理すること」と定義されています(法人税法2条25項)。
たとえば減価償却資産について、その償却費として法人税法22条3項により損金算入するためには、法人税法31条1項に基づいて、まず損金経理をしておかねばなりません。
したがって、もし法人が損金経理をし忘れた場合、減価償却費は一切損金算入できません。
これは「決算書で示した内容に基づかない課税所得の計算は制限される」ためです。つまり「決算書で減価償却費を計上していないのに、課税所得の計算上、減価償却費を計上することは制限される」ということです。

