「法人における負債と株式の区別」、言いかえれば「法人における借入と株式発行による資金調達の区別」ですが、両者の違いは明確であると考える人は多いかもしれません。
しかし、実務上両者の区別はとても不明瞭です。今回は「法人における借入による資金調達と株式発行による資金調達の区別は実務上とても不明瞭である」ことについて解説します。
なお、個人事業主の世界では「株式」というものは登場しません。他方、法人の世界では「株式」というものが登場します。つまり、「負債と株式の区別」という問題は法人の世界の問題であり、この区別は法人税法上においてとても重要となります。
伝統的な負債と株式の特徴
現在施行されている法律の中に、負債と株式の定義は定められていません。しかし伝統的に言われている負債と株式の特徴として以下のようなものがあげられます。
負債の特徴
① リターンがあらかじめ確定している(固定利率)
② 債務の返済日および利息の支払い日が確定している(期日確定)
③ 会社が倒産した場合などに、残された資産につき株主に優先して返済を受けることができる
④ 議決権がない
株式の特徴
① 法人事業の成功に応じてリターンは変動する(変動利率)
② リターンの支払日は未確定であり実行されないこともある(期日未定)
③ 会社が倒産した場合などに、残された資産につき債権者に劣後して出資の払い戻しを受ける
④ 議決権がある
負債と株式の区別は実務上不明瞭である
世の中には負債と株式の性質を合わせ持つ有価証券が存在します。
古典的な例は優先株式です。優先株式は会社法上、種類株式に分類されます(会社法108条1項)。一般的に優先株式は配当について優先的な権利を持っている反面、議決権が制限されています。よって優先株式は負債寄りの株式と言えそうです。
このように現代では負債の要素と株式の要素を組み合わせた証券を発行することが可能です。一般的に企業は、証券の命名(○○債と名付けるか、○○株と名付けるか)から始まって、当該証券にどのような経済的性質を与えるか原則として自由に選ぶことができます。その結果、負債なのか株式なのか、はっきりと判明しない証券が誕生するのです。
さらにこれらの証券に「オプション」が付されることもあります。オプション付きの証券で有名なのが「転換社債型新株予約権付社債」です。この社債には株式に転換できる権利がオプションとして付いています。このようなオプションが付されると、ますます負債と株式の区別が不明瞭になるのです。
負債と株式の区別は法人税法上重要である
以上のように、企業は負債と株式の両方の性質を兼ね備えた証券を自由に作ることができます。
しかし、法人税の計算を行うにあたっては両者の区別が必要となります。なぜなら負債か株式かで法人税の計算が異なるからです。
よって法人税法上、両者を区別する判断基準が必要となります。その判断基準の一つとして法人税法22条4項を根拠に、会計上の扱いを法人税法上の判断基準にすることが考えられます。つまり会計基準上「負債」と判断したら法人税法上も「負債」と判断し、会計基準上「株式」と判断したなら、法人税法上も「株式」と判断するということです。
ただし、この判断基準も完璧な判断基準ではないので、ケースバイケースの対応にならざるをえません。

